食生活 (栄養)

地中海食が精子の質へ及ぼす影響

細川忠宏

mediterraneandiet
3ヶ月間の低炭水化物地中海食は、男性のテストステロンレベルを上昇させ、精子の質の悪化も低減させることが明らかになりました。

地中海食は、現在さまざまな生活習慣病の発症リスクを低減する理想的な健康食と言われています。
地中海食が男女の生殖機能に良い影響を与える可能性については、これまで多くの研究によって示唆されていますが、男性の精子に対する影響については十分な検討がなされていませんでした。

今回の研究では、低炭水化物地中海食がテストステロン値と精子のDFI(精子の質を評価する指標として一般的に使われている、精子のDNAの損傷度合い)に与える影響を調査しました。

対象は35~45歳の男性不妊患者50名で、そのうち30名には通常の地中海食、20名には通常の地中海食に加え、1日の摂取カロリーを35%減らした低炭水化物地中海食を、それぞれ3ヶ月間実施しました。
地中海食を実施したグループではテストステロン値の変化を、低炭水化物地中海食を実施したグループではの精子DFIの変化を測定しました。

地中海食の内容は以下の通りです。

・朝食:全粒粉のパンに卵やサーモン、ナッツ類、果物を加えたもの。
・乳製品:山羊チーズのみ摂取。
・発酵食品:ヨーグルトやケフィアなどを日常的に摂取。
・果物:赤い果物を日常的に摂取。上限は1日300gまで。
・緑黄色野菜:1日3皿摂取。
・ナッツ類:1日30g摂取。
・豆類:週に3~4回摂取する。
・海藻:週に少なくとも5~6回。
・脂ののった魚:週に2~3回食べる。
・加工肉:食べない。
・オーガニック肉:週3~4回摂取。
・卵:週に8~10個。
・アブラナ科の野菜:週に4~5回以上摂取。
・加工食品・調理済食品:食べない。
・ショウガ、ターメリック、コリアンダー、ローズマリー、バジル、ニンニク、タマネギ、パセリなどのスパイス:頻繁に使う。

その結果、3ヶ月間の地中海食を実施したグループでは、テストステロンが3.2±0.3から6.92±1.16に有意な上昇が見られました。

低炭水化物地中海食を実施したグループでは、精子DFIが44.2±3.02から23.3±3.57に有意に低下しました。

炭水化物を減らし、豆類、全粒穀物、緑葉野菜が多く含まれた地中海食、および80%のオーガニック食品の摂取は、男性のテストステロン値の向上と精子DNA断片化の減少に関連することが示唆されました。

<コメント>
女性においても、地中海食は体外受精の良好な妊娠率や妊娠高血圧腎症発症リスク低下、さらには、産後うつ発症リスクの低下にまで関連するという研究報告がなされています。

食(栄養)と生殖機能の関係についての研究が増えていますが、最近の傾向として栄養素や食品単体ではなく、食べ方、すなわち、食事パターンに着目し、どんな食べ方をすれば、妊娠や出産に有利になるのかが調べられています。

なぜなら、私たちは、普段、栄養素を食べているわけではなく、いろいろな食べ物を組み合わせて食事しているからです。

食習慣がどのくらい地中海食に近いかを数値化したものが「地中海食スコア」で、スコアが大きいほど地中海食に近いことを意味します。

算出方法は、地中海食に関連する11種類の食品の摂取量や摂取頻度を6段階(0-5)で点数化し、それを合計(0-55)します(https://www.akanbou.com/medscore.pdf)。

11種類の食品は以下の通りです。

・多く食べるほどスコアが高くなる食品:無精製穀物(全粒穀物、全粒粉パン、全粒粉パスタ、玄米他)、じゃがいも、果物、野菜、豆類、魚、オリーブオイル
・多く食べるほどスコアが低くなる食品:赤身肉や鶏肉、全脂肪乳製品(チーズ、ヨーグルト、牛乳)、アルコール

「なにを食べるかよりも、どう食べるか」が妊娠や出産に影響するということです。