睡眠の質が精液所見に及ぼす影響
男性の睡眠の質の低下が精液所見の不良と関連することが、北米で妊娠を希望するカップルの男性を対象とした大規模な研究により明らかになりました。
男性の生活習慣が妊娠に与える影響については、近年ますます関心が高まっています。
北米で実施された大規模な妊娠前コホート研究「PRESTO研究」により、睡眠の質と精液所見(精液量や精子濃度といった精液検査の結果)の関係が明らかになってきました。
この研究は妊娠を希望するカップルの男性を対象に行われ、2015年〜2023年に21歳以上の男性690名から得られた、のべ1,247の精液データが解析されています。
参加者は、過去1か月間の睡眠時間や過去2週間の睡眠障害の頻度について自己申告を行い、一部の参加者はピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)にも回答しています。これらの情報と、精液検査によって得られた精液量、精子濃度、運動率などのデータとの関連が統計的に評価されました。
結果として、睡眠時間と精子の質の間には興味深い傾向が見られました。
1日の睡眠時間が6時間未満の男性では、7〜8時間の男性と比較して、精液量や精子濃度、総精子数、運動精子数のいずれも低い傾向が認められました。特に総精子数では約27%の低下が示されており、短時間の睡眠が生殖機能にマイナスの影響を及ぼす可能性が示唆されました。
一方で、睡眠時間が長すぎる場合にも同様の傾向が見られました。1日9時間以上の睡眠をとる男性は、一般的とされる7〜8時間程度の睡眠をとる男性と比べて、精子濃度や総精子数が低下していました。
つまり睡眠は「短すぎても長すぎても良くない」という、いわゆるU字型の関係が示唆される結果となっています。
さらに、睡眠の「質」に着目した分析でも重要な知見が得られました。睡眠障害が「常にある」男性は、「全くない」男性と比較して、精子濃度や総精子数、運動精子数が低い傾向にありました。
また、PSQIスコアが5以上の「睡眠の質が不良」とされる群では、精子濃度、総精子数、総運動精子数のいずれも低下と関連していました。特に総精子数では統計的に有意な低下が確認されており、睡眠の質が精子の量・機能の両面に影響する可能性が考えられます。
<コメント>
この研究結果はこれまでの先行研究とも概ね一致しており、男性の睡眠状態が生殖能力に関与する可能性を裏付けるものです。
妊娠を希望するカップルにおいて、女性だけでなく、男性も生活習慣に目を向ける重要性が改めて示されたと言えるでしょう。
ただし、睡眠の質は「改善可能な因子」である一方で、実際に良好な睡眠を確保することは容易ではありません。仕事やストレス、生活リズムの乱れなど、現代社会には睡眠を妨げる要因が数多く存在します。そのため、いきなり理想的な睡眠を目指すのではなく、まずは就寝時間を一定にする、寝る前のスマートフォン使用を控える、カフェイン摂取のタイミングを見直すといった、日常の中で取り組みやすい改善から始めるのがよいかもしれません。

