アンチエイジング 食生活 (栄養)

脂質・あぶらシリーズ(その2)ココナッツオイルとMCTオイル

白井 由紀

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「美容に良い」と話題になっているココナッツオイルやMCTオイル。目にされたことはありますか?いくら美容に良いといっても、間違った使い方をすると意味がありません。今回はココナッツオイルとMCTオイルについて記述いたします。 

まず、脂肪酸について説明いたします。脂肪酸は脂質の主な成分で、酸素・炭素・水素が鎖状につながった構成になっています。この鎖が体のなかで分解する過程で熱量が発生し、日常のエネルギー源となります。脂肪酸には大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」にわけられ、「飽和脂肪酸」は大きなエネルギー源に、「不飽和脂肪酸」は細胞膜など生体構造の原料として利用されます。
 ココナッツオイルは、ココナッツの果肉から作られた油で、通常、瓶詰になっています。液体でも固体でも品質には問題はありません。ココナッツオイルは、大きなエネルギー源になる「飽和脂肪酸」が高く90%程含まれており、主な成分は「中鎖脂肪酸(MCT)」です。MCTオイルは「中性脂肪酸」のことで、通常、液体で市販されています。  
「中鎖脂肪酸」とは脂肪酸の一種で、同じく脂肪酸の仲間である「長鎖脂肪酸」と比較して脂肪酸の鎖状が短く、すぐに肝臓に届くため、エネルギーとして使われやすく、体脂肪になりにくいです。消化吸収は約4倍、代謝は約10倍早いと言われています。 
また、ココナッツオイルの「中鎖脂肪酸」に豊富に含まれる「ラウイン酸」には酵素の働きを活性化する面があり、抗酸化作用になります。更に「中鎖脂肪酸」は肝臓で分解させるとケトン体に変化します。ケトン体に含まれるβ‐ヒドロキシ酪酸が活性酵素の除去に効果を発揮します。このようなことから、「中鎖脂肪酸」には抗酸化・抗炎症・免疫力効果作用があります。  
ココナッツオイルやMCTオイルは、消化・吸収・分解がスムーズなうえ、エネルギーになりやすいので体脂肪になりにくく、体の酸化も防ぐ作用があります。「美容に良い」と話題になっているのは、こういった理由からなのです。日常でも取り入れたい油です。 
使い方としては、ココナッツオイルは揚げ物、炒め物といった加熱料理に向いています。一方、MCTオイルは加熱には向いていないので、調理した料理にかけます。ドレッシングとして使用したり、コーヒー、スープといった飲み物に入れるとこまめに摂取することができます。日本人の飽和脂肪酸の目標量は推定エネルギー必要量の7%。成人の推定エネルギー必要量の平均量2000kcalとすると140kcal。グラム換算すると15g程になります。1日の摂取目安はココナッツオイルとMCTオイル合わせて、大さじ1杯と考えたほうがいいでしょう。 
 参考文献
1) 菱田明・佐々木敏(2017)「日本人の食事摂取基準(2015年版)」第一出版

2) 亜細亜食品株式会社,http://asiashokuhin.com/international/cecil/(2019.3閲覧)

3) McCarty MF, DiNicolantonio JJ et al, Lauric acid-rich medium-chain triglycerides can substitute for other oils in cooking applications and may have limited pathogenicity,Open Heart. 2016 Jul 27;3(2):e000467