母児の健康 食生活 (栄養)

妊娠直後の胎内環境は、子どもの一生に影響するかも

小浦ゆきえ


2015年5月のニュースから、気になったものを紹介します。
(国立健康栄養研究所 LINK de DIET 世界の最新健康・栄養ニュースより)

ゲノムワイド研究が妊娠初期の栄養不良の永続的な影響を示すという報告がありました。これは、先日のブログに書いたエピジェネティクスに関する追跡調査の研究報告です。

妊娠初期のママの栄養状態が子どもの遺伝子に影響する

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報告されたのは、第二次世界大戦末期のオランダに起きた飢饉の冬(1日の摂取カロリーが900kcal以下)によって、子どものDNAのメチル化にどのような影響があったのかということの続報です。この追跡調査は、以前から行われていて、「母体の飢餓が赤ちゃんの健康に与える影響は妊娠週数によって異なる」という報告がされています。当初の研究で、妊娠初期(1~10週)の飢餓状態によって胎児の遺伝子のメチル化が進むという報告があり、その後の追跡調査で大人になってからのインスリン分泌能力の低下などの報告がされてきています。
この時期(1944-45)に生まれた赤ちゃんは、もうすぐ70歳。人生の終盤に向かう時期となりました。

今回の論文は、2003~2005年(58歳頃)の調査報告で、「妊娠中に受けたメチル化によって、58年たっても遺伝子の発現が抑制されている」と報告されています。

今後も調査報告が続きますが、「胎内で受けたメチル化の影響は、一生影響を与え続ける」という結果になるのかもしれません。また、このメチル化によって、健康状態にどのような影響がどのくらいあるのかなど、これから研究報告が増えていきそうです。

妊娠初期のためには、妊娠前からの準備が必要

今回の調査では、妊娠1~10週という区切りでしたが、妊娠に気付けるのは、早くて6週目以降です。
赤ちゃんの遺伝子のエピジェネティクスが活発な時期(受精から着床までの間)の栄養状態を改善するには、妊娠する前から始めておくことしか方法はありません。
食事の栄養バランスや葉酸はもちろん、必要に応じてベースサプリメントなどの力も借りて、受精直後のエピジェネティクスに備えたいですね。

<文 健康食品アナリスト 小浦ゆきえ> 著書 「男と女の子宝サプリ