妊娠中のビタミンD濃度が男児の11歳までの成長と体型に影響を与える可能性
妊娠中に母親のビタミンDが欠乏していると、生まれた子供の肥満リスクに影響を与える可能性が示唆されました。
妊娠中の母親のビタミンD濃度が、生まれた子供の成長、体型、体内の脂肪生成などに影響を与える可能性があることがわかってきています。
昨年スペインで報告された研究では、妊娠中の母親のビタミンD濃度が、生まれた子供の成長や肥満に与える影響について、長期にわたって調査が行われました。
この研究では、2027組の母子を対象にし、母親が妊娠13週目に血液中のビタミンD3濃度が測定されました。その後、生まれた子供が7歳と11歳の時点で、その体重から性別や年齢に基づいた肥満度が算出され、また11歳時点では、体脂肪量も測定されました。
結果として、参加した妊婦のうち、17.5%でビタミンD3欠乏症(20ng/mL 未満)がみられ、その子供のうち約40%が、7歳と11歳の両方で過体重となりました。
ただし、ビタミンDレベルと成長や肥満の関連は、性別によって異なっていました。男児では、妊娠中にビタミンD3が欠乏していると、低出生体重リスクが高く、その後、7歳と11歳時点でのBMIや体脂肪率が高くなり、過体重のリスクが高くなることが確認されました。一方で、女児ではこれらの関連は見られませんでした。
この結果は、男児において、妊娠初期のビタミンD3濃度が子供の体型に長期的に影響を与える可能性を示唆しています。
<コメント>
ビタミンDは、よい卵子をつくったり、子宮内膜を着床に適した状態にするなど、妊娠出産に深くかかわる重要な栄養素であることが、わかってきています。
今回の報告では、ビタミンDの充足度が、妊娠や出産のみならず、誕生した子供の長期にわたる健康状態に関連する可能性が示されています。
そして興味深いことに、妊娠中のビタミンD不足が、子供の成長や体型への影響を与えたことが確認されたのは男児のみで、この傾向は女児では見られなかったということです。
また昨年、日本人の不妊治療中の女性を対象とした研究では、参加者の93.5%でビタミンDが不足していたという報告がなされています。
ビタミンDの血中濃度は冬季でもっとも低くなることもわかっており、日照時間の短い季節では、さらに不足に注意が必要です。
日本人は特に紫外線を避ける傾向にありますが、ビタミンD不足を回避する基本的な方法は、日光にあたることです。
ビタミンDの充足のためには、意識して日に当たり、また必要に応じてサプリメントでの補充も検討するとよいかもしれません。