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葉酸の食品への添加と先天性心疾患有病率との関係

細川忠宏

Folicacid
葉酸を小麦粉やパスタなどの食品に添加することを義務づけた後、先天性心疾患の有病率が低下したことがカナダの調査で明らかになりました。

カナダ保健省、公衆衛生庁の研究者らは、カナダ政府が1998年に実施した葉酸の食品への添加が先天性心疾患の発症にどのように影響を及ぼしたのか調べるために1998年の前後の出生時と幼児期の先天性心疾患数を比較しました。

1990-2011年のカナダの出生児、5,901,701名で先天性心疾患と診断された子どもは72,591名で、有病率は1000人あたり12.3名でした。そして、葉酸を食品への添加を義務づけた1998年の前後で比べると、先天性心疾患は11%減少したことがわかりました。先天性心疾患の種類別にみると、円錐動脈幹異常が27%(aRR:0.73 95%CI 0.62-0.85)、大動脈縮窄が23% 、心室中隔欠損が15%、そして、心房中隔欠損が18%、それぞれ低下しました。

このことから、二分脊椎症などの神経管閉鎖障害の予防を目的に葉酸の食品への添加を義務づけたカナダ政府の政策は、先天性心疾患の有病率低下にも関連したことがわかりました。

ビタミンB群の一つである葉酸は細胞の分裂、増殖になくてはならない役割を担っていて、不足すると先天性の二分脊椎症などの神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなることが知られています。そのため、日本の厚生労働省は妊娠前から1日に400μgの葉酸のサプリメントを摂取するように呼びかけています。

アメリカは世界に先駆けて、1992年に妊娠を計画している女性は葉酸のサプリメント摂取するように勧告しました。さらに、1998年からは、小麦粉やシリアル、そして、パンやパスタ、米などの穀類のは100gあたり葉酸を140μg添加するように法律で義務付けたのです。要は、赤ちゃんの先天異常を予防するために、全国民に葉酸を強制的に補充させたよいうわけです。それほど、葉酸の補充効果が明らかであったこと、二分脊椎症の発症率が高かったということがわかります。そして、カナダや中米、南米のすべての国がそれにならい、現在、世界で80カ国以上で実施されています。

葉酸の食品添加を義務づけた国では、たいてい、その効果を検証していて、実施前後で出生児の先天異常が少なくなっているかどうかを調べています。その結果、二分脊椎症の出生率は葉酸の食品添加後はほぼ半減したというものです。

その一方、葉酸の補充は先天性心疾患の予防効果も期待できるのではないかとの意見があり、そのことを示す研究報告もありました。そこで、今回、カナダの公衆衛生庁は葉酸添加前後の先天性心疾患の有病率を比較したというわけです。

日本での先天性心疾患は100人に1人とされています。

公益財団法人日本心臓財団のサイトによりますと、「原因は多くの因子が複雑に影響して起こるとされており、特定できないことがほとんどです。遺伝的な要因もありますが、90%以上がこれらの環境因子によるといわれています。多くの場合、原因は不明と考えてよいでしょう。この30年ほど、100人に1人という確率は変化しておらず、生活環境や社会の様相の変化とは関係がなく、生命の誕生過程で起こるわずかな変化が臓器の発育と形成に異常を及ぼすと考えられます。」とのこと。