ビタミン 母児の健康

コエンザイムQ10補充による卵巣予備能維持効果

細川忠宏

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コエンザイムQ10の補充はミトコンドリアの働きの低下や加齢による卵巣の老化による卵巣予備能の低下を遅らせる可能性があることをトルコのラットを使った動物実験で確かめました。

トルコとアメリカの研究チームはコエンザイムQ10の補充が、酸化ストレス増大や年齢による卵巣予備能(*)の低下を防げるか調べるために、実験用ラットを用いた試験を実施しました。

まず、ラット24匹を8匹ずつ3つのグループに分けました。

1)比較対照グループ:生理食塩水を注射したり、飲ませたりした。  2)シスプラチン:DNAを損傷させ、酸化ストレスを増大させるシスプラチンを注射し、人為的に老化させた。
3)シスプラチン+コエンザイムQ10:人為的に老化させ、かつ、6日目から毎日コエンザイムQ10を150mg/kg飲ませた。

グループ1は、比較対照グループとして食塩水だけを飲ませ、グループ2は人為的に老化させ、グループ3は人為的に老化させると同時にコエンザイムQ10を毎日飲ませ、3週間飼育し、卵巣予備能を調べるために血中のAMH(アンチミューラリアンホルモン)を測定し、卵巣の働きを調べるために原始卵胞数や胞状卵胞数、そして、閉鎖卵胞数を調べ、グループ間で比較しました。

その結果、以下の通りでした。
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表)卵巣予備能の指標のグループ比較

血中AMH値や原始卵胞数や胞状卵胞数は、いずれも比較対照グループが最も高かったのですが、人為的に老化させたグループ2と3ではコエンザイムQ10を補充したグループ3のほうがいずれも高く、また、閉鎖卵胞数はコエンザイムQ10を補充したグループが最も少ないことがわかりました。

この結果から、コエンザイムQ10の補充は酸化ストレスや年齢による卵巣予備能や卵巣の働きの低下を維持する効果があることがわかりました。

*)卵巣予備能とは?
文字通り卵巣が有する潜在的な卵巣機能の予備力のことで、卵巣における卵胞の量と卵の質を反映し,加齢とともに低下し女性の生殖機能に影響を与える概念として定義できる(日本産婦人科学会)。

30代半ば以降、女性の妊娠率が急激に低下したり、流産率が上昇するのは、年齢による卵質の低下によるものとされていますが、その原因としてミトコンドリアの機能低下が関係しているということを示す多くの研究があることから、高齢による妊娠率低下は主には卵子の老化によるものでその詳細なメカニズムはわかっていませんが、そのプロセスにミトコンドリアが中心的な役割を果たしていると考えられています。

そのため、ミトコンドリアでエネルギー産生に関与したり、抗酸化作用に働く「コエンザイムQ10」や「L-カルニチン」、「αリポ酸」、あるいは、ミトコンドリアの長寿遺伝子を活性化するとされている「レスベラトロール」などを補充することで、妊娠率の低下を少しでも食い止められないかと期待されています。

ところが、現時点ではヒトを対象とした試験でその効果を確かめられていませんが、コエンザイムQ10やレスベラトロールだけが動物を使った実験で効果が確かめられています。

今回の研究は、その中の1つで、コエンザイムQ10の卵巣予備能の維持効果をラットを使った実験で確かめたものです。

この研究では年齢やミトコンドリアの働きの低下で酸化ストレスが増大し、卵巣予備能が低下したラットを用意する代わりに、シスプラチンという抗がん剤を使って、DNAを損傷させ、酸化ストレスを増大させ、人為的に老化を引き起こしたラットを使っています。これは、おそらく、高齢のラットを用意するのが困難なためではないかと考えられます。

結果は対照グループに比べ、人為的に老化させたグループは卵巣予備能が低下していますが、その中でもコエンザムQ10を飲ませたグループのラットは卵巣予備能が維持されたことがわかりました。

もちろん、動物実験の結果ですので、そのままヒトにあてはめることは出来ません。

ただし、年齢による妊娠率の低下を少しでも遅らせるために「なにかやっておきたい」との考えであれば、バランスによい食事と運動、そして、サプリメントを使うのであれば、根拠が全くないものよりも、コエンザイムQ10を試してみるのがよいかもしれません。