不妊治療カップルのサプリメント使用と出産や流産との関連
米国で不妊治療を希望する2,370組のカップルを追跡した研究により、女性のマルチビタミンサプリメントの使用は生児出産率の上昇と関連することがわかりました。また一方で、男性のサプリメント使用では明確な関連は認められませんでした。
妊活中や不妊治療中に、葉酸を含むビタミンやミネラル、オメガ3脂肪酸、コエンザイムQ10などのサプリメントをとり入れている方は少なくありません。一方でその実態や出産や流産との関連を大規模に検討した研究は限られていました。
今回アメリカで行われた研究では、アメリカ国内の4施設で2013-2017年のあいだに登録された、不妊治療を希望する2,370組のカップル(男性18歳以上、女性18〜45歳)を対象に、サプリメントの使用状況と出産や流産との関連が調べられました。参加者は研究開始時に質問票により、マルチビタミンや個別サプリメント(女性:カルシウム、魚油、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、男性:コエンザイムQ10、魚油、ビタミンB12、ビタミンC、亜鉛)の使用状況が収集されました。参加者は最長で18か月追跡され、主な評価項目は出産および流産(妊娠20週未満)としました。
その結果、研究開始時点でマルチビタミンを使用していた割合は、女性で67%、男性で37%でした。個別のサプリメントでは、女性では葉酸、魚油、ビタミンC、カルシウム、ビタミンB12が多く、男性では魚油、ビタミンC、ビタミンB12、コエンザイムQ10、亜鉛が多く使用されていました。プロテインシェイクやプロテインバーの使用も多くみられました。
追跡期間中に出産に至ったカップルは全体の35%でした。年齢、BMI、喫煙、飲酒、食事の質、身体活動量、不妊治療の内容など、結果に影響しうる要因を調整した解析では、女性のマルチビタミン使用は生児出産率の上昇と有意に関連していることがわかりました。具体的には、女性がマルチビタミンを使用していた場合、生児出産に至る割合は使用していない場合と比べて22%高いという結果でした。一方で、男性のマルチビタミン使用については、生児出産率との明確な関連は認められませんでした。
カップル単位でみると、女性のみがマルチビタミンを使用していた場合、または男女ともに使用していた場合には、生児出産率の上昇との関連がみられました。しかし、男性のみが使用していた場合には、同様の関連は認められませんでした。
さらに治療法別にみると、女性のマルチビタミン使用と生児出産率との関連が有意だったのは、不妊治療を受けなかった群のみでした。人工授精でも同じ傾向はみられたものの統計的に有意ではなく、ART(生殖補助医療)を受けているカップルでは関連は認められませんでした。
流産については、妊娠が成立した1,054組のうち218組、約21%に認められました。解析の結果、女性・男性いずれのマルチビタミン使用も流産との有意な関連はありませんでした。また、葉酸、魚油、ビタミンC、コエンザイムQ10、亜鉛などの個別サプリメントについても、流産との明確な関連は示されませんでした。
結論として、不妊治療を受けるカップルにおいて、サプリメントは一般に使用されていおり、特に女性のマルチビタミンサプリメントの使用は、特に不妊治療を受けない女性において生児出産率の上昇と関連することが分かりました。
<コメント>
今回の研究は、不妊治療を希望するカップルを対象に、男女それぞれのサプリメント使用と妊娠転帰を検討した大規模な研究です。特に、女性のマルチビタミン使用と生児出産率の上昇との関連が示された点は注目されます。ただし、この研究はサプリメントを使用するかどうかを無作為に割り付けた試験ではなく、研究開始時点での使用状況をもとにした観察研究です。そのため、マルチビタミンを使用していた女性は、もともと健康意識が高い、食生活や生活習慣が整っている、医療へのアクセスが良いといった背景を持っていた可能性があります。
また、サプリメントの用量や製品ごとの成分内容、その後の継続状況までは詳しく確認されていません。したがって、今回の結果は「女性のマルチビタミンが生児出産率を高める」と断定するものではありません。
一方で、妊娠前から葉酸を含むマルチビタミンを適切に摂取することは、妊娠に向けた栄養状態を整えるうえで重要な選択肢のひとつです。サプリメントは不妊治療そのものの代わりになるものではありませんが、バランスの良い食事の実践や生活習慣の改善とあわせて、妊娠前からの体づくりを支える補助的な方法として考えることができます。

