食生活 (栄養)

食事ガイドラインと不妊症リスクとの関連

細川忠宏

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オーストラリアの国レベルの大規模研究において、炎症抑制食や地中海式食事パターン、そして、オーストラリアの食事ガイドラインのいずれも妊孕能に良好な影響を及ぼす食べ方であることが示唆されたことから、妊娠を希望する女性に対しては、妊娠のための特別な食事法でなくても、一般的な食事ガイドラインに基づいた食事指導も適切な選択肢になる得ることが示されました。

食事が生殖機能に影響するというデータが増えてきています。
その中でも地中海式食事パターンは自然妊娠での妊娠しやすさやART治療の成績、さらには妊娠や出産後の母子のさまざまな健康面への良い影響に関連するという報告が多くなされています。 

また、最近は食事性炎症指数(dietary inflammatory index:DII)を用いて、炎症を促進する食べ方は妊孕能の低下に関連するという報告もなされています。

ところが、地中海式食事パターンや抗炎症食のような特別な食べ方を実際の医療現場で行う食事指導で実施することは簡単ではありません。 

そこで、オーストラリアの大規模な研究において、食事性炎症指数(DII)や食事パターン、食事ガイドラインが不妊症リスクとどのように関連しているか、また、これらの関連が食事パターンのスコアリング方法によって異なるかが解析されましたのでご紹介します。 

本研究は、オーストラリア女性健康縦断研究(1973~1978年コホート・2009年時点で31-36歳・被験者5,489名/不妊症群:1,289名、非不妊症群:4,200名)のデータを用いた大規模横断研究として実施されました。 
・炎症促進食はエネルギー調整済み食事性炎症指数(E-DII™)を用いて評価。 
・一般的な健康食は食事ガイドライン指数(DGI)を用いて評価。 
・主成分分析(PCA)を用いて食事パターンを解析し、その結果として「西洋型食事パターン」「地中海式食事パターン」「植物中心型食事パターン」の3つを抽出。 

これらの指標と、自己申告による「妊娠までにかかった期間」を組み合わせ、1年以上かかった場合を“不妊症群”、1年未満の場合を“非不妊症群”として分類し、両者の関係を評価しました。

主な結果は以下の通りです(頭書論文の記載を当社がまとめたものです)。 
1)炎症促進性(E-DII)が高い食事は、不妊症リスク上昇と関連しました。 
2)食事ガイドラインに近い食べ方ほど、不妊症の低いリスクと関連しました。
3)主成分分析(PCA)では、地中海式食事パターンは不妊症の低いリスクと関連しました。

以上の通り、炎症促進性食品摂取量が少ないこと、地中海式食事パターンを守っていること、そして、食事ガイドラインに沿った食生活をしていることといった健康的な食習慣が不妊症リスク低下と関連していることが示されました。


このことにより、一般的なガイドラインに沿った健康的な食生活が女性の妊孕能を守り、特別な食事法の代わりとなる現実的な選択肢となり得ることが示されました。

〈コメント〉
地中海式の食事パターンが良いことや、炎症を促す食品を減らし、炎症を抑える食品を多くとるべきだと言われても、実際の毎日の食生活に取り入れるのはなかなか難しいという課題があります。

オーストラリアでは、国レベルの大規模な研究として、女性の健康に関する前向きコホート研究が実施されており、研究から得られたエビデンスは、女性の健康にかかる施策等に活用されています。 

今回の研究で、公的な食事ガイドラインに沿った健康的な食事も、地中海食や炎症抑制食同様、不妊症リスク低下に関連すること示されました。

これらの食事では、果物、野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ、種子、魚を多く食べ、飽和脂肪酸、糖分、赤身肉・加工肉、テイクアウト食品を少なく食べるという共通点があります。

このような一般的な健康的な食事が女性の生殖機能を守る可能性が示されたことはとても重要な意味をもっています。