食生活 (栄養)

腸内細菌叢によい食事と女性の不妊症リスクの関係

細川忠宏

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腸内細菌叢によい影響を及ぼす食事をしている女性は、そうでない女性に比べて不妊症のリスクが低いという研究報告がなされています。

腸内環境と妊娠しやすさの関係についてはこれまでにも多くの報告がなされていますが、腸内環境に良いとされる食事指標(DI-GM)と女性不妊との関連はこれまで検討されていませんでした。

そこで中国の江南大学のグループは2013年から2018年のNHANES(全米健康栄養調査)の食事調査データから腸内細菌叢のための食事指数(DI-GM)を算出し、その関連性を解析しました。

また、腸内細菌叢のための食事指数と不妊リスクがどのように関連しているかについて検討するため、被験者の血液中のリンパ球の数と赤血球に含まれる葉酸の量についても調べました。

DI-GM(Dietary Index for Gut Microbiota)の算出方法は以下の通りです。

腸内細菌に有益または有害な食品または栄養素として以下の14種類が定義されています。

【腸内細菌に有益な成分】
アボカド、コーヒー、緑茶、クランベリー、発酵乳製品、ブロッコリー、ひよこ豆、食物繊維、大豆、全粒穀物

【腸内細菌に有害な成分】
加工肉、精製穀物、赤肉、高脂肪食(脂肪から得られるエネルギーが40%以上)

食事調査(本研究では24時間思い出し法)で腸内細菌に有益な成分の摂取量が中央値より多ければスコア1が付与され、有害な成分については、摂取量が中央値または高脂肪食の場合は40%より多ければスコア0が付与され、それ以外の場合はスコア1が付与され、その合計をDI-GMとして算出します。本研究の24時間思い出し法では緑茶が含まれていないため、スコアは0から13になります。

つまり、このスコアが高いほど腸内細菌によい影響を及ぼし、低いほどマイナスの影響を及ぼす食べ方になります。

調査の結果、対象となった1555名のうち311名が女性不妊と診断されており、DI-GMスコアが高いほど女性不妊リスクが低いことがわかりました。

また、DI-GMスコアで4つのグループに分けると、スコアの上位2グループは最も低いグループに比べて不症リスクが有意に低いことがわかりました。

以上のことから、腸内細菌叢によい影響を及ぼす食事をしている女性ほど不妊症になりにくいことがわかりました。

さらにそれらには免疫に関わるリンパ球数と赤血球中の葉酸濃度が関係していることも明らかになり、腸内細菌によい食事をすることで免疫が整い、赤血球中の葉酸濃度が上昇することが関係している可能性が示唆されました。

<コメント>
この研究では、腸内細菌叢のための食事指数が用いられています。

その食事指数を算出するために用いられている食品から端的に考えると、アボカド、コーヒー、緑茶、クランベリー、発酵乳製品、ブロッコリー、ひよこ豆、食物繊維、大豆、全粒穀物をしっかり食べて、加工肉、精製穀物、赤肉、高脂肪食は出来るだけ少なくするように食べることが腸内環境によいことになります。 

腸内細菌は私たちが食べたものを餌として生息していますので、食事内容が腸内細菌の種類を決めることになるというわけです。
上記食品と普段の食事を照らし合わせ、できることから摂り入れてみると良いかもしれません。