地中海食の有効性を子宮内膜代謝物から探る研究
不妊症の女性のうち、子宮内膜症や、着床不全といった不妊原因をもつ女性では、子宮内膜に多価不飽和脂肪酸(PUFAs)の濃度が低いことがわかりました。また、地中海食を実施することで子宮内膜の状態が改善し、食事が子宮内膜の機能に影響をあたえる可能性が示されました。
人間の子宮内膜には、脂質やアミノ酸、糖類など、さまざまな代謝物が存在しています。
そしてこの代謝物のバランスが悪くなると、着床率の低下や子宮内膜症に結びつく可能性が明らかになっています。
そしてこの代謝物のバランスが悪くなると、着床率の低下や子宮内膜症に結びつく可能性が明らかになっています。
また地中海食とは、果物、野菜、穀物、ナッツ、豆類、魚、オリーブオイルを中心にした食事で、肉や乳製品、加工食品の摂取量が少ないという特徴があります。この食事は健康上の利点があることが示されており、子宮内膜症や妊娠のしやすさに良い影響を与えることが分かってきていますが、子宮内膜の代謝物との関係についてはまだ十分に研究がなされていませんでした。
今回スペインで行われた研究では、子宮内膜に存在する代謝物と不妊原因との関連、また健康的な食生活と言われる地中海食が子宮内膜にあたえる影響について、調査がなされました。
研究では、不妊原因のうち、男性因子8人、原因不明10人、着床不全14人、子宮内膜症13人の女性を対象として、それぞれの参加者の子宮内膜に存在する代謝物と、地中海食の実施状況が調査されました。
参加者の子宮内膜を調査した結果、確認された925種類の代謝物の中で脂質が最も多く、脂質の中でも多価不飽和脂肪酸(PUFAs)が主要なものでした。
しかし、子宮内膜症や着床不全の女性は、多価不飽和脂肪酸(PUFAs)の濃度が低く、子宮内膜に存在する代謝物のバランスが悪くなっていることがわかりました。
さらに、地中海食を実践している度合いが高いほど、子宮内膜の代謝物に良い影響を与え、子宮の健康状態が良いほど、その影響も大きいことが示されました。
<コメント>
不妊原因となる様々な要因に焦点を当て、子宮内膜の代謝物を総合的に調査した研究です。その結果、子宮内膜の機能に影響を与える可能性のある代謝物の特定と、地中海食が子宮内膜の状態によい影響を与える可能性が示されました。
地中海食は、一般に健康食として知られ、さまざまな生活習慣病にかかりにくくなるほか、生殖機能との関連についても、その有効性についてさまざまな研究がなされている食事法です。
地中海食は主に、以下のような特徴があります。
・野菜や果物を多く摂取する
・全粒粉を使用する
・脂質はオリーブオイルが中心
・ナッツ類、ベリー類、豆類、イモ類の摂取量が多い
・魚、鶏、乳製品を少量から中量、赤身肉の摂取は少ない
・卵は週4回以下
・食事とともに少量から中量のワインを摂取する
今回の研究では、子宮内膜症や着床不全の女性は、子宮内膜に多価不飽和脂肪酸が少ない傾向にあることがわかりました。
食事からの多価不飽和脂肪酸の摂取との関連は今回の研究では調査されていませんが、多価不飽和脂肪酸は脂肪酸の一種で、食品では、青魚に多く含まれるDHAやEPAに代表されるn-3系脂肪酸と、コーン油やごま油に多く含まれるn-6系脂肪酸があります。