食生活 (栄養)

鉄欠乏が不妊に及ぼす影響

細川忠宏

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鉄欠乏は、不妊症の女性によくみられる問題です。昨年オーストリアの研究者らによって行われた研究では、不妊女性における血液中の鉄の状態が調査され、貧血の症状がない場合でも、フェリチン値が低いと妊娠にマイナスの影響を及ぼす可能性が明らかになりました。

この研究では、18-40歳の女性72名を対象とし、そのうち36名は原因不明の不妊症であり、残りの36名は健康な非不妊症の女性でした。
すべての参加者は月経周期が24-38日で、過去12周期で異常な出血はなく、6ヶ月間何らかの鉄剤を使用していない女性を条件として調査が行われました。 

調査方法として、各参加者の月経開始から2~5日目に採血を実施しました。
そして採血の結果から、血清フェリチンを主な指標として、血液中の鉄の状態が調べられました。

結果として、不妊症の女性は非不妊症の女性に比べ、フェリチンの少ない、鉄欠乏の率が高いことがわかりました。

そのほか、血液中で鉄を運ぶたんぱく質であるトランフェリンも少なく、ヘモグロビンの濃度も低かったということです。

<コメント>
この研究で主な指標とされた血清フェリチンは貯蔵鉄とされ、貧血の症状がなくてもこの値が低いと「隠れ貧血」と呼ばれ、妊娠や出産にマイナスの影響を及ぼすことがわかっています。

今回の研究でも、原因不明の不妊症が、低いフェリチン値(鉄欠乏)に関連している可能性が示されました。

妊娠を望む女性にとって、鉄を充足させておくことは重要な問題です。
ただし、サプリメントは過剰摂取により卵巣の状態にマイナスの影響があることも報告されているため、食事から補充することを一番に考えるとよさそうです。

鉄は、赤身肉やカツオやマグロなどの動物性食品にヘム鉄として、大豆、小松菜や春菊などの緑黄色野菜、ナッツなどの植物性食品に非ヘム鉄として存在しています。

体内で吸収されにくい性質を持つ非ヘム鉄ですが、ビタミンCやクエン酸、リンゴ酢などの有機酸を摂り入れたり、酸味のあるものやスパイスを加え、胃酸の分泌をよくすることで吸収率が高めることができます。