不妊の原因になる病気 食生活 (栄養)

飲酒と妊娠する力の関係

細川忠宏

alcohol
妊娠を望む女性にとって週に14サービング以上の飲酒は妊娠する力のわずかな低下に関連する傾向がみられるものの、週に14サービング未満の飲酒は妊娠する力への明らかな影響はみられないことがデンマークの研究でわかりました。
オーフス大学病院の研究チームは、2007年6月〜2016年1月にかけて、21〜45歳の妊娠を希望する女性6,120名に飲酒や妊娠の状況、月経サイクル、性交の頻度、喫煙について、最長で12ヶ月間(妊娠、あるいは、不妊治療を開始すれば終了)、隔月のアンケートを実施しました。

飲酒量は、サービングとし、アルコールの種類別の1サービングは以下の通りです。
・ビール:330mL(缶ビール1本)
・ワイン:120mL(グラス1杯)
・蒸留酒:20mL

その結果、飲酒量の中央値は週に2サービング、調査期間中に4,210名(69%)の女性が妊娠し、全く飲酒しない女性では8,054周期中1,381の妊娠があったのに対して、週に14サービング以上飲酒する女性では307周期中37の妊娠がありました。

そして、妊娠しやすさに影響を及ぼす他の要因を統計的に調整した結果、全く飲酒しない女性の妊娠しやすさを1とした場合、飲酒量別の妊娠しやすさは、以下の通りでした。

・週1-3サービング  :0.97(95%CI 0.91-1.31)
・週4-7サービング   :1.01(95%CI 0.93-1.10)
・週8-13サービング :1.01(95%CI 0.87-1.16)
・週14サービング以上:0.82(95%CI 0.60-1.12)

このことから、週に14サービング以上の飲酒は妊娠しやすさのわずかな低下に関連するものの、14サービング未満の飲酒は明らかな妊娠しやすさの低下には関連しませんでした。ただし、対象者の数は大規模ながら、週の14サービング以上の飲酒の女性の割合は全体の1.2%に過ぎなかったことからこの結果の受け止めには注意を要すると指摘しています。

また、妊娠の可能性のある時期は胎児への影響を考慮し、飲酒を避けるのが無難であるとしています。
過度の飲酒は心身の健康や生殖機能に悪影響を及ぼします。また、妊娠後は飲酒を控えるべきであることはよく知られています。ところが、妊娠前、特に、ARTに臨む場合、お酒は控えるべきなのか、もしくは、どの程度であれば問題ないのかについて、気にされるカップルが少なくありません。

今回の研究結果は、週に14サービング未満までの飲酒は妊娠しやすさに影響しないというもので、ビールやグラスワインであれば1日に1、2杯程度であれば問題ないと言えます。

ただし、妊娠の可能性がある時期やART治療では胚移植後は胎児への影響を考えて、お酒は控えるのが無難であるとも指摘されています。