男性の加齢は精子DNAの損傷に影響する
男性の年齢は、精子の濃度や運動率、精液量には影響しない一方で、精子DNA断片化指数(DFI)が上昇し、ARTの治療成績にマイナスの影響があることがわかりました。
精子DNA断片化指数(DFI)とは、精液中にDNAの損傷した精子が含まれる割合のことで、受精率の低下や胚の発育にマイナスの影響があるという報告が増え、精子DFI検査にも関心が高まっています。
女性に比べて男性の年齢が生殖能力にどう影響するかはまだわからない部分が多いことから、今回ブラジルの研究者らによって、男性の年齢が精子の質や生殖補助医療の治療成績に与える影響を調査されました。
研究では、2016年から2021年の間に精子DFI検査を受けた367名の男性を対象とし、年齢ごとに3グループに分け、平均DFIを比較しました。
さらに被験者のうち、そのパートナーがART治療を受けた255人については、精液パラメータ―(精子濃度、精子運動率、精液量)、女性パートナーの年齢、ART成績(受精率、良好な胚盤胞の割合)を比較しました。
その結果、男性の年齢が高くなるほど、精液パラメーターはほとんど変わらない一方で、DFIは高くなることがわかりました。
具体的には、一番若い、35歳未満のグループでは平均DFIは20.8%だったのに対し、45歳以上のグループでは平均DFIは28.6%だっということです。
具体的には、一番若い、35歳未満のグループでは平均DFIは20.8%だったのに対し、45歳以上のグループでは平均DFIは28.6%だっということです。
各年齢グループの女性パートナーの年齢に差はほとんどなかったものの、良好な胚盤胞の割合は、男性の年齢が上がるほどに低くなり、精子のDFIが高いと、良好な胚盤胞を得られにくくすることが分かりました。
男性の加齢は精液パラメーターではなく、精子DFIに影響を及ぼしたことから、カップルの男性の年齢が高い場合、精子DFIが高くなることによってART治療成績にマイナスの影響を及ぼす可能性があることが示されました。
<コメント>
女性の年齢によって卵子も加齢していくことは広く知られていることではありますが、男性の精子の質も加齢に影響を受けることが、今回の研究によって明らかになりました。
精子のDNAが損傷する原因はさまざまあり、加齢のほか、酸化ストレス、精索静脈瘤、肥満、喫煙や飲酒といったライフスタイルなどの要因によって精子DFIが上昇することがわかっています。
またDFIは通常の精液検査では調べることができないため、精液検査に問題がなくても、DFIが高くなっている場合があります。
ただ、男性の精子は毎日作り続けられるため、改善が可能です。
年齢や生活習慣に不安のある男性は、生活習慣の改善からはじめてみると良いかもしれません。