不妊の原因になる病気

精子の質は男性の長期に渡る健康状態の指標になるかもしれない

細川忠宏

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男性の精子の数や運動率は長期に渡る男性の健康状態の指標になり得ることがデンマークで実施されたコホート研究で明らかになりました。 

精子の質は男性の長期に渡る健康状態の指標になることがこれまでの研究で示唆されていますがデータが不十分であることから、南デンマーク大学の研究グループは、デンマークの不妊クリニックに訪れた男性5,370名の中から4,712名の男性を対象とした前向きコホート研究を実施しました。

 1977年から2010年の間、初めての入院や死亡、試験期間終了まで追跡し、デンマーク国民全員の病院での受診記録が登録されているデンマーク国立患者レジストリ(Danish National Patient Registry)のデータベースを用いて、入院や心疾患、糖尿病、精巣がん、前立腺がんと精子の質との関連を解析しました。 

その結果、精子濃度が低い(1500万/mL)男性は、高い(4000万/mL)男性に比べて、入院するリスクが50%、心疾患にかかるリスクが40%高く、精子濃度が1億9500万から2億/mLの男性は、0-500万/mLの男性に比べて初めて入院するまでの期間が平均7年長いことがわかりました。

 また、精子の質は長期間に渡る死亡率に関連し、特に、心疾患や糖尿病で入院するリスクが有意に高いことがわかりました。

これらの結果から、精子の質はトータルの健康の強い指標になることが示唆されました。 

マスコミの報道や関係者の情報発信によって、不妊の原因は男性、女性、半々にあり、不妊症は決して女性だけに原因があるわけではないことは、一昔前に比べて、多少は知られるようになったでしょうか。 

男性不妊の原因は、もちろん、多岐に渡るのですが、2016年に実施された厚労省の事業として実施された、「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」では、男性不妊の原因のほとんどは造精機能障害、すなわち、精子をうまくつくれないというもので、そのうちの半分弱は原因不明となっています。 

要するに、男性不妊の多くはなにが原因かはわからないけれども、全体に精子の数が少なかったり、活発に動く精子が少なく、妊娠させる力が低下しているということのようです。 

男性不妊という問題は、元気な赤ちゃんを授かることで解決し、解消されるはずなのですが、今回の研究によって、精子の数や運動率が低いということは、男性自身の将来の健康という問題が新たに発生したということになります。 

このことは、考えようによってはラッキーと受け止められます。 子作りがきっかけで、将来、病気にかかるリスクを知ることで、これから健康に留意すれば、そのリスクを下げることになるかもしれないからです。とても意味のある研究報告だと思います。