不妊の原因になる病気

精液検査だけではわからない男性側の問題

細川忠宏

AdobeStock_243299579
一般的な精液検査で異常が見つからなかった場合でも、それだけで妊娠する力が十分あるとは限らないことがわかってきました。大規模研究により、精液所見が基準値内の男性でも、詳しい検査を行うことでさまざまな異常が見つかる可能性が示されています。

不妊の原因の約半数に男性側の要因が関わるとされていますが、実際の診療では、精液検査で数や運動率、形などが基準値内であれば、それ以上の検査は行われないことが一般的です。しかし、精液検査が「正常」であっても妊娠する力が保証されるわけではないという点は、あまり知られていません。

今回紹介する研究では、精液所見が正常と診断された不妊カップルの男性を対象に、より詳しい検査を行うことで、どのような異常が見つかるのかが調べられました。

対象となったのは、ドイツ・ミュンスター大学生殖医学・男性学センターを2010~2020年の間に受診し、2回の精液検査でいずれも正常と判定された997名の不妊男性です。これに対し、妊娠可能と考えられる男性276名を対照として比較し、問診や身体診察、精巣の超音波検査、ホルモン測定などを行いました。

その結果、まず注目されたのは、性機能に関する問題です。不妊男性では、勃起の問題や性欲の低下、射精のトラブルといった症状が、対照群に比べて有意に多くみられました。

さらに、小児期の停留精巣や尿道下裂といった先天的な異常の既往も、不妊男性で多く認められました。

体格にも特徴があり、不妊男性では肥満の割合が高いことがわかりました。

ホルモンの測定では、不妊男性の多くでテストステロンなどの男性ホルモンが低い傾向が見られました。特に、いわゆる「性腺機能低下症」と呼ばれる状態に該当する男性は約4人に1人と高頻度で認められています。これは精液所見が正常であっても、生殖機能に関わる異常が存在していることを意味します。

また、遺伝的な要因も一部関与している可能性が示されました。特定の遺伝子タイプを持つ男性では、精子を作る過程に関わるホルモン(FSH)が低くなる傾向が、不妊男性に限って認められました。

さらに、精液中の白血球や円形細胞(未熟な細胞)が増えているケースも多く見つかりました。これは、目に見えない炎症や感染、あるいは免疫の異常が関係している可能性を示しています。

結論として、精液検査で問題がなかった997名の男性では、性腺機能低下症、勃起障害、停留精巣やその他の先天性泌尿生殖器異常、特定の遺伝子タイプにおけるFSH低下、精液中の白血球増加など、精液検査のみではわからない多くの異常が高い確率でみられることがわかりました。

<コメント>
今回の研究結果から見えてくるのは、「精液検査が正常=問題なし」とは言い切れないという結果でした。

一般的な不妊治療では女性側の検査や治療が中心になりがちですが、男性側にも見えない原因が存在し、精子の質が低下している場合があります。

精子の質を低下させる要因はさまざまありますが、年齢とともに老化している卵子と違い、精子は毎日つくられ続けるため、生活習慣や食習慣を見直すことで改善することが可能です。

精子の質の改善のために男性が取り組める方法を以下にご紹介します。

・バランスの良い食生活を心がける
  肉食に偏りがちな方は、野菜や果物、魚も意識して摂るようにし、炭水化物は玄米ごやんやライ麦パンなどの、精製度の低いものに替えてみましょう。

・十分な睡眠と適度な運動を
 適度な運動は体の抗酸化力を高め、ホルモンバランスにもよい影響を及ぼしますが、過度な運動はかえって精子の質の低下につながるので注意が必要です。

・適正体重を維持しましょう
 やせすぎ、太りすぎ、どちらもパートナーの妊娠率の低下につながることがわかっています。

・タバコやアルコールはほどほどに
 精子の質を下げる原因となる、酸化ストレスを増やしてしまうほか、アルコールは男性にとって大切なミネラルである亜鉛の吸収を妨げてしまいます。

・育毛剤はひかえましょう
 フィナステリドを主成分とするAGA治療薬には、男性ホルモンの作用を抑えるはたらきがあるため、精子の質の低下につながります。

・高温に注意
 精子をつくる精巣は熱に弱い性質があります。長時間のサウナや入浴、ぴっちりとした下着は避けるようにしましょう。

・禁欲期間を短くする
 禁欲期間が長くなると、質の低下した精子が増えることがわかっています。