不妊の原因になる病気

原因不明や軽度男性不妊カップルの不妊治療開始後1年間の自然妊娠率

細川忠宏

20180519
原因不明、もしくは、軽度の男性不妊で1年以上妊娠が成立せず、不妊治療を開始したカップルでも、その後1年間に約25%の割合で自然妊娠に至ることがオランダで実施されたRCTの二次解析で明らかになりました。

オランダの研究グループは、避妊をやめて定期的な性交をもっても1年以上妊娠に至らなかった原因不明不妊、もしくは、軽度の男性不妊カップルにとって、不妊治療を開始後の1年間で、どれくらいの確率で自然妊娠が可能なのかを調べることを目的に無作為比較対象試験(RCT)、INeS研究の二次解析を実施しました。

INeS研究とは、女性の年齢が18-38歳の自然妊娠の可能性の低い原因不明、もしくは、軽度の男性不妊のカップル、602組(女性平均年齢:33.6歳、平均不妊期間:2.6年)を対象に3つの治療方法(3周期の単一胚移植+凍結融解胚移植・6周期の自然周期の体外受精胚移植・卵巣刺激を伴う人工授精6周期)の治療効果を比較することを目的に実施されたRCTです。

602組のカップルにおいて、研究期間中に342症例の妊娠が確認され、その内、77症例は治療のなかった周期での自然妊娠で、推定自然妊娠率は24.5%でした。

また、18-38歳、1-3年の推定自然妊娠率は22-35%で、女性の年齢が高くなるほど、不妊期間が長くなるほど自然妊娠率は低くなりました。

これらの結果から、原因不明不妊で不妊治療を開始しようとしているカップルは、なお、その後1年間は、4回に1回の確率で自然妊娠による継続妊娠のチャンスがあることが示されました。

避妊をやめて性交をもっても1年間妊娠に至らない場合を不妊症と定義されています。

ただし、もしも、両側卵管閉塞や無排卵、無精子症などの重度の男性不妊でなければ、その後(1年以上経過後)、自然妊娠が全く期待できなくなるというわけではありません。

そこで、オランダの研究グループは、INeS研究で得られた臨床データを二次解析し、原因不明不妊や軽度の男性不妊で1年以上妊娠に至らなかったカップルで、不妊治療を開始した後の自然妊娠の確率を統計学的に算出しました。

その結果、卵巣刺激を伴う人工授精や体外受精を開始した後でも、約25%の確率で治療のない周期に自然妊娠の可能性があることがわかりました。

このことから、たとえ、人工授精や体外受精にステップアップしたからといって、自然妊娠を諦める必要がないということが言えます。