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不妊クリニック通院カップルの男性パートナーの携帯電話の使用と精子の質

細川忠宏

mobilephone
携帯電話の使用と精子の質は関連しないことがアメリカで実施された試験で明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、EARTH研究(マサチューセッツ総合病院で高度生殖補助医療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる前向きコホート研究で2006年にスタートして現在も進行中)に参加しているカップルの男性パートナー153名(18-56歳)を対象に携帯電話の使用と精子の質との関係を調べました。

携帯電話の使用については、看護師から配布されたアンケートで、直近の3ヶ月間に携帯電話を使用の有無、1日の使用時間(2時間未満、2-4時間、4時間超え)、また、使用者にはヘッドセットの使用の有無と使用頻度、そして、携帯電話の収納場所(ズボンのポケット、ベルト、鞄、その他)について回答してもらい、精液検査の結果との関係を解析しました。

その結果、携帯電話の使用の有無や使用時間、収納場所と精液検査のいずれの結果とも関連はみられませんでした。

これまで携帯電話の使用と精子の質の関係については、多くの研究が行われています。それらの結果は、互いに相反するもので、関連するというものもあれば、関連しないというものもあります。

そのため、ハーバード大学のEARTH Studyで行われた試験が今回の報告で、関連しなかったというものです。今回の試験の特徴としては、精液検査を複数回受けた男性がいたことで、1回の男性は全体の44%で、2回が28%、3回が9%、4回以上が19%で、153名の男性から350の精液が提供されています。

いずれにしても、これまでの研究は横断研究で、ある時点の携帯電話の使用と精液検査結果の関連を調べたもので、どうしても結果の精度は低くならざるを得ません。

そもそも、携帯電話の使用と精液検査結果の関連は、携帯電話の発する電磁波が精子そのもの、または、精子をつくる働きにマイナスの影響を及ぼすのではないかという仮説のもとに行われていますが、それらの因果関係を、直接、調べることは困難です。

個人の感覚としては、男女問わず、スマホを操作する時間は、どんどん、長くなっているように思いますが、精子の質への影響についてはなんの結論も導くことができません。 

出典:Reproductive Toxicology 2017; 67: 42-47