母児の健康 有害物質

尿中のトリクロサン濃度と卵巣予備能との関係

細川忠宏

triclosan
ハーバード公衆衛生大学院とCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の国立環境衛生センター の研究チームは、トリクロサンが女性の卵巣年齢に及ぼす影響を調べることを目的に、マサチューセッツ総合病院でART治療を受け、EARTH研究(*)に参加している109名の女性患者を対象に研究を実施しました。

試験開始時と治療周期中に2回、採尿した225検体の比重調整後の尿中トリクロサンを測定し、月経3日目、もしくは、消退出血3日目に超音波検査で測定した胞状卵胞数との関連を解析しました。

その結果、尿中トリクロサン濃度が高い女性ほど胞状卵胞数が少ないことがわかりました。特に、BMIが25未満の女性や35歳未満の女性の間で、より強い傾向がみられ、BMIが25未満の女性では尿中トリクロサン濃度が中央値を上回る女性はそれ以下の女性に比べ胞状卵胞数が3.2個、35歳未満の女性では1.8個、それぞれ、少ないことがわかりました。

これらの結果から、不妊治療を受けている女性では尿中のトリクロサンと卵巣予備能の指標である胞状卵胞数は負の相関関係にあり、その傾向は標準体型の女性、若い女性でより強いことがわかりました。

トリクロサンは、一般的な家庭用抗菌剤で、薬用石鹸やうがい薬、シャンプー、食器用洗剤、歯磨き、脱臭剤、手の消毒剤、さらには、化粧品などに広く使用されていますが、昨年の秋、アメリカの米国食品医薬品局(FDA)がトリクロサンやトリクロカルバンを含む抗菌石けんを1年以内に販売停止にすることを発表しました。

理由は、その殺菌効果に疑問があること、長期間の使用で有害になるリスクがあるかもしれないからとのこと。

それに伴い、日本の厚生労働省もトリクロサン不使用の取り組みを促すことを決定しています。

そんな中で、アメリカのハーバード大学と政府機関による女性の卵巣年齢への影響を調べる研究が実施されました。

その結果、尿中のトリクロサン濃度が高い女性ほど卵巣予備能が低い傾向が確かめられました。

そのメカニズムは未だ不明で、結論づけるのは早計ですが、トリクロサンやトリクロカルバンが成分中に含まれる石鹸やハンドソープ、シャンプ、洗剤、化粧品などは避けるのが無難かもしれません。