母児の健康

ART女性患者の運動と妊娠率、出産率

細川忠宏

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体外受精や顕微授精の女性患者の治療周期前の運動は、高い妊娠率や出産率に関連することが中国で実施されたメタ解析の結果、明らかになりました。

昆明医学院第一附属医院の研究者らは、体外受精や顕微授精に臨む女性患者の治療周期前の運動は治療成績に関連するのかどうかを評価すべく、過去の研究を統合し、解析しました。

合計3683名の対象者を含む8つの研究を抽出し、解析した結果、治療周期前に運動習慣のある女性は、運動習慣のない女性に比べて、妊娠率が1.96倍、出産まで至る確率が1.95倍(OR = 1.96, 95% CI 1.40, 2.73, I2 = 42% and OR = 1.95, 95% CI 1.06-3.59)高いことがわかりました。着床率も高い傾向がみられたものの統計学的に有意な差ではありませんでした。流産率への影響はみられませんでした。

このことからART女性患者の治療前の運動は妊娠率や出産率の増加に関連することがわかりました。

運動習慣は体外受精や顕微授精の治療成績によい影響を及ぼすかもしれません。

これまで運動と治療成績の関連を検討した8つの研究結果を統合し、解析した結果ですが、もちろん、8つの試験は、どんな運動を、どれくらいの強度で、どれくらいの頻度と時間、行うことを運動習慣があるとしたのか、また、どのような方法で運動習慣を調査したのかは、試験ごとに異なり、ばらつきがあります。さらに、いずれも観察研究であり、あくまで、運動習慣と治療成績にポジティブな関連が見出されたというものです。

そのため、今後、比較対象試験の実施が必要とはしていますが、ART治療に臨むカップルは1日1時間弱の軽い運動を週に3回以上を目安に推奨しています。

また、運動が治療成績に良好な影響を及ぼすメカニズムとして、3つ挙げています。

まずは、身体活動は健康状態を改善し、エネルギーバランスが整うことと生殖機能が関連するのではないか、また、身体を動かすことがインスリンの効き目をよくし、卵巣機能や子宮内膜の環境によい影響を及ぼすのではないか、そして、最後にメンタル面を挙げて、ストレスを緩和することが生殖機能によい影響を及ぼすのではないかとしています。

ただし、運動のやり過ぎや過激な運動は、逆効果になるリスクがなることがわかっています。あくまで、軽度から中等度です。