母児の健康

IVF/ICSI女性患者の卵胞液中のAGEs(終末糖化産物)

細川忠宏

AGEs
体外受精や顕微授精の女性患者の卵胞液中のAGEsは卵巣の反応性や胚質と関連することが中国の研究で明らかになりました。

南京大学の研究者らは、体外受精や顕微授精の女性患者(PCOSの女性は除く)の卵胞液中のAGEs値が採卵数や胚質に影響するか否かを調べることを目的とした研究を行いました。

ロング法による卵巣刺激を受け、体外受精や顕微授精に臨む127名の女性患者を対象に、採卵時に採取した卵胞液中のAGEs値を測定し、その後の各成績との関連を解析しました。

その結果、卵胞液中のAGEs値と採卵数や受精卵数、良好胚数、受精率、良好胚率の間には有意な負の相関関係が認められました。

採卵数は7個以上15個未満と目標としましたが、採卵数が7個未満の女性の卵胞液中のAGEs(19.6±4.5)は、7個以上15個未満(15.8±5.7)や15個以上(14.8±5.2)の女性のそれに比べて有意に高かったことがわかりました。

目標に到達できない採卵数(7個未満)の卵胞液中のAGEs値のカットオフ値は15.3μg/ml(感度84.6%、特異度55.5%)でした。

これらの結果から卵胞液中のAGEs値は卵巣刺激に対する反応性や胚質に関連することが示唆されました。

AGEsとは、体内の「糖化」によってできる物質のことで、Advanced Glycation End-productsの頭文字をとってAGE、日本語では「終末糖化産物」と言われています。

糖化とは「たんぱく質と糖が結合すること」です。私たちの身体はほとんどがたんぱく質でできていますが、たんぱく質は体内に入ってきた糖と結び付きやすい性質があるため、血糖値が高い状態が続くと、糖化が起こり、それによってたんぱく質が変性し、老化促進物質であるAGEsができてしまいます。

AGEsの生成によって臓器や組織を構成しているたんぱく質が変性してしまうため、組織のつくりが弱くなり、臓器の働きが低下してしまいます。これが、AGEsが老化の原因になり、老化を促進する物質だと言われるゆえんです。

そして、このAGEsが卵巣や卵胞液中に生成され、蓄積すると、卵巣の機能が低下しまうのではないかと考えられています。

今回の研究は、ART女性患者の卵胞液中のAGEsの蓄積が排卵誘発に対する卵巣の反応性や胚の質に、実際にどのように影響を及ぼすのかを調べたものです。

AGEs値が高いほど卵巣刺激の各成績は低下し、卵巣予備能の指標とされているAMHやAFCと相関しました。また、胚の質とも相関することが確かめられました。

これまで出来てしまったAGEsを取り除くことは難しいとされていますが、AGEsは年齢とともに蓄積されていきますが、高血糖状態は蓄積を加速させますので、インスリンの効き目を良好に維持するような生活習慣を心がけることが大切なのかもしれません。