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400μg?480μg?葉酸摂取量に迷ったら

小浦ゆきえ

妊娠中に必要な葉酸は400μg?480μg?

厚生労働省(当時の厚生省)が、「妊娠計画中~妊娠初期の女性は栄養補助食品から1日400μgの葉酸を…」という通達を出したのが2000年の末。もう15年以上前のことです。
15年が経ち、「妊娠=葉酸が大切」という情報は多くの女性に知られるようになりましたが、「知っていても摂ってない」場合や、「情報が多すぎて迷ってしまう」というケースも増えてきました。

先日、「日本人の食事摂取基準で妊娠中の葉酸の推奨量が480μg/日になっているのに、400μg/日しか入っていないサプリメントでは足りないのでは?」という質問もいただいたりもしたのです。

今回は、初心に戻り、日本人の食事摂取基準や厚生労働省の通達の内容をじっくり読み解いていきたいと思います。

まずは日本人の食事摂取基準2015を確認

yosan
まず、日本人の食事摂取基準2015(国立健康・栄養研究所、厚生労働省)の内容を確認しておきましょう。
食事摂取基準には、表だけが載った「概要」版と、詳しく書かれた「報告書」版があります。栄養士さんなどは報告書版でしっかり確認しますが、一般の方が目にするのは、ほぼ概要の表だけなのです。

ちなみに、葉酸の表は↑のように書かれています(妊娠可能性のある年齢層の女性の情報のみ抜粋)。この情報を読むと、このよう↓に理解しますよね。
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30代で妊娠していない女性の推奨量は240μg。
30代で妊娠中の女性の場合、推奨量は(240+200=)480μg/日。
そして、妊娠計画中から妊娠初期の女性は1日400μgを栄養補助食品で補うことが推奨される。
上限量は妊娠しているかどうかに関係なく1000μgです。
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これだけを見て、「推奨量が480μg?ということは400μgのサプリメントじゃ足りないの?」と、慌てた人もいたようです。

葉酸の適量については、よーく読まないとわからない2重構造があるのです。

正しく理解するために押さえておきたいポイントは、『書かれている数値が「食事性葉酸」なのか「合成葉酸」なのか』という点です。

食事摂取基準の内容を整理すると…

葉酸の適量を知るためには表を見るだけでなく、報告書を読んで書かれている数値の意味を正しく理解する必要があります。
先ほどの解釈を、どんな葉酸についての説明なのか加筆してみると、
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30代で妊娠していない女性の推奨量は(食事性葉酸で)240μg。
30代で妊娠中の女性の場合、推奨量は(240+200=)(食事性葉酸で)480μg/日。
そして、妊娠計画中から妊娠初期の女性は1日(合成葉酸で)400μgを栄養補助食品で補うことが推奨される。
上限量は妊娠しているかどうかに関係なく(合成葉酸で)1,000μgです。
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ということになります。合成葉酸は、食事性葉酸に換算すると約2倍となります。つまり、合成葉酸400μgは、食事性葉酸800μgに相当します。
これはわかりにくいですよね。海外では、食事性葉酸換算値に表現を統一するところも出てきているようです。

食事性葉酸に統一してみると、
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30代で妊娠していない女性の推奨量は(食事性葉酸で)240μg。
30代で妊娠中の女性の場合、推奨量は(240+200=)(食事性葉酸で)480μg/日。
そして、妊娠計画中から妊娠初期の女性は1日(食事性葉酸換算で)800μg相当を栄養補助食品で補うことが推奨される。
上限量は妊娠しているかどうかに関係なく(食事性葉酸換算で)2,000μg相当です。
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ということになります。
ですから、妊娠を計画中の女性がサプリメントを選ぶ場合は、合成葉酸なら400μg、天然由来葉酸なら800μgを目安にしましょう。

ちなみに、平成27年国民健康栄養調査の結果では、30代女性の食事からの葉酸摂取量は243μg/日でした。妊娠していないときは足りていますが、妊娠すると(480μgに対しては)不足気味…という量です。妊娠初期はもちろん、妊娠中期以降は1日100μg程度補助してあげると推奨量を満たせそうです。