食生活 (栄養)

女性のアルコールやカフェイン摂取と治療成績との関係

細川忠宏

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ART(高度生殖補助医療)治療前の適量のアルコールやカフェイン摂取はその後の治療成績に関連しないことがアメリカで実施された試験で明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、EARTH研究(*)に参加している300名の女性の治療前1年間のアルコールやカフェン摂取量と493治療周期の体外受精や顕微授精の治療成績との関係を調べました。

研究では、治療開始前に食物摂取頻度調査票に回答してもらい、過去1年間のアルコールやカフェインの摂取量を算出しました。因みに飲料別のアルコールやカフェイン量は以下の通りです。

◎アルコール
・ライトビール1缶(355mL):11.3g
・レギュラービール1缶(355mL):12.8g
・ワイン1グラス(118mL):11.0g
・蒸留酒1ショット(44mL):14.0g

◎カフェイン
・コーヒー1杯(237mL):47mg
・清涼飲料水(炭酸飲料355mL):46mg
・チョコレート(1オンス28g):7mg

1日のアルコールやカフェイン摂取量の中央値は、それぞれ、5.6 gと124.9 mgで、摂取量で5つのグループ(アルコール/0g、0.1-6.0g、6.1-12.0g、12.1-24.0g、24.1-85.8g、カフェイン/0.3-50g、50.1-100、101.1-200、200.1-300、300.1-642)にわけ、年齢や人種、BMI、不妊原因、摂取カロリー、葉酸、ビタミンB12、喫煙、食事パターン等の影響を調整した治療成績との関連を解析しました。

その結果、アルコール摂取量別の出産率は、摂取量の低い順に、それぞれ、34%、46%、41%、42%、41%、同様に、カフェイン摂取量別の出産率は、46%、44%、42%、40%、40%で、アルコール、カフェインともに摂取量と治療成績の関連はみられませんでした。

また、アルコールとカフェインのいずれも、飲料による違いについて関連はみられませんでした。

この結果から、ART治療前の1年間の適量のアルコール摂取量、たとえば、1日12g以下、カフェイン摂取量、たとえば、1日200mg未満程度であれば、治療成績にマイナスの影響を及ぼさないことがわかりました。

EARTH研究とはハーバード大学医学部の関連病院であるマサチューセッツ総合病院で体外受精や顕微授精を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる前向きコホート研究のことで、2006年にスタートして現在も進行中です。

これまでアルコールやカフェインの摂取とART治療成績との関係については、多くの研究が行われていますが、摂取量の調査方法にバラツキがあるからか、相反する結果が報告されています。

今回、ハーバード大学のEARTH Studyで、治療前の1年間のアルコールやカフェインについて、適量、たとえば、アルコールであれば1日12g未満、カフェインであれば1日200mg未満、程度であれば、ART治療成績(子宮内膜厚、獲得成熟卵数、着床率、妊娠率、出産率)にマイナスの影響を及ぼさないことがわかりました。