ビタミン 食生活 (栄養)

食品成分の基準値改定で、ヒジキの鉄分が激減?

小浦ゆきえ

食品成分表の改訂内容が発表に!

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日本食品標準成分表は5年ごとに文部省が改定しています。2015年度は改定が予定されている年度だったので、昨年末に改定内容が発表になりました。
今回の改定で、収録されている食品数が300以上増えました…とかいう進化はあったのですが、気になるのは「栄養補給のために!」と思って食べている身近な食品のこと。
今回は、食品成分表を読み解きながら、食品の栄養素のほんとのところを確認していきたいと思います。

成分量自体は、既に文部省のホームページで公開されています。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)
3月末までには、成分表が本として店頭に並んだり、食品成分データベースにも反映される予定です。

ニュースにもなった「ひじきの鉄分が激減?!」

今回の改定内容が発表になって、ニュースに取り上げられたのが「ひじきの鉄分がかなり低く改定された」ということです。

改定の理由は、「ひじきは鉄窯でゆでられることで鉄の含有量が高くなっていたが、ステンレス釜での加工が増え、鉄分が低いものも増えている」から。
ひじきの鉄分が急に激減したわけでではなく、時代とともに製造環境が変化したことで栄養価も変化したということです。
ちなみに、今回の改定から「鉄窯」か「ステンレス釜」かで区別されています。

新しい成分表をみると、ステンレス釜で加工されたものは、鉄分の量が鉄窯の約1/10。
つまり、ステンレス釜で製造されたひじきの場合、「鉄分補給のためにひじきを食べる」ということ自体が無駄になってしまうかもしれません。

この他にも!高栄養と誤解されている食材

今回の改定で変更になったものではありませんが、私たちが普段「〇〇が豊富な食品といえば△△」と思っている食品が、実はそうではないというものもあります。

・ビタミンCといえば…レモン?

「ビタミンCがレモン〇個分!」という表示は色々な食品で見かけますよね。1個分のレモン果汁に含まれるであろうビタミンC量が20mgとされています。
これは昭和62年の「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」がもととなり、2008年に廃止された現在も業界基準としてこの基準値が使われています。

ちなみに、このビタミンC20mgを他のビタミンC豊富な食材で摂ろうとすると、キウイ(緑)30g(約1/3個)、ゴールデンキウイ 15g(約1/6個)、アセロラジュース(10%果汁) 17g、赤・黄ピーマン 15g(パプリカの1/7くらい)、生キャベツ 50g、ゴーヤ 25g、ゆでブロッコリー・ゆでカリフラワー 50gといった量です。

キウイで換算すると1/3になってしまいますから、多そうに見せたいときには、レモンを基準にした方が有利になりますよね。ビタミンCの量を表現するときは、そういった理由でレモンが引き合いに出されているのかもしれません。

・鉄分といえば…プルーン?

プルーンが鉄分補給になると言われていましたが、実際はどうなのでしょう?成分表をみると、ドライプルーンの鉄量は100g中 1mg。
たしかに、プルーン以外にも干しブドウは2.3mgというようにドライフルーツは生の果実類に比べて多いのですが、これは乾燥して濃縮されたから。同じ果物1個を比べた場合、生のプルーン1個でもドライプルーン1個でも含まれている鉄量は同じです。それに、ドライプルーン100gは、毎日食べようとすると、けっこう大変な量です。

ちなみに、肉や魚に含まれている鉄は100gあたり1~3mg、レバーなどは10mg以上あります。大差ない数字に思えますが、肉や魚に含まれているのは、吸収率が約5倍も高いヘム鉄です。
そう考えると、プルーン100gよりは肉を20gの方が楽に続けられますよね。

・食物繊維といえば…レタス?

食物繊維を最初に「レタス〇個分」と表現したのは、今もなおトクホとして製造され続けている大塚製薬の「ファイブミニ」のCMだったとか。成分表で見ると、レタス100gあたりの食物繊維(水溶性・不溶性合わせて)1.1g。レタス1個約300gとすると、3.3gというのがレタス1個分として想定される食物繊維の量です。ファイブミニは今も「食物繊維6g(レタス1.8個分)」として販売されています。

ちなみに、同じくらいの食物繊維を摂ろうとすると、キノコ類50~80g、アボカド 半個、干し柿1個、アーモンド30g、リンゴ皮つき1個、枝豆(豆のみ)70g、グリーンピース50g、ごぼう60g、とうもろこし100g、ブロッコリー100g、ほうれん草100gといった量になります。レタス1個よりは現実的に続けられそうです。

おそらく、レタスが選ばれたのは「大きい割に食物繊維が多くない+葉物野菜には食物繊維が多そうなイメージがある」からでしょう。ただ、ビタミンCの「レモン〇個分」という表現と違い、「レタス〇個分」という表現には業界ルールが設けられていません。つまり、メーカーによってレタス1個を200gと想定していたり400gと想定していたりするのです。つまり、「レタス〇個分の食物繊維」という表現がどのくらい曖昧で、購入の判断基準にならないものかお分かりいただけたでしょうか。
まずは普段の食事で食物繊維豊富なキノコや野菜をしっかり食べ、食物繊維が添加された製品を選ぶ際は、「レタス〇個分」ではなく「食物繊維〇g」という表示を見て判断しましょう。
ほんとうに高栄養な食材もたくさんありますが、一部の情報は広告などで作られたイメージの場合もあります。「健康のために〇〇を食べる!」と特定の食材にこだわるよりも、色々な食材、特に旬のものをバランスよく食べる方ことをおすすめします。