食生活 (栄養)

炎症を高める食事と子宮内膜症との関係

細川忠宏

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炎症を起こしやすい食事は子宮内膜症の発症リスクにつながることがわかり、炎症を起こしにくい食事によって子宮内膜症を予防できる可能性が示されました。

子宮内膜症の原因として、慢性的な炎症が関係していることが分かっていますが、近年、慢性炎症と食事との関連が指摘されています。

つまり食事には、炎症を起こしやすい食事と炎症を抑制する食事があり、食事が体の炎症状態に影響を及ぼすということです。

食事が炎症状態に及ぼす影響の指標としては、食事性炎症指数(DII:Dietary Inflammatory Index)があり、DIIスコア低いほど炎症を抑える食事で、高いほど炎症を促進する食事であると評価されます。

今回、中国の研究者たちは、全米国民健康栄養調査(NHANES)*のデータから、食事性炎症指数と子宮内膜症の関連性を調査しました。

研究では、NHANESから3,410人の女性を対象として抽出し、食事に関するアンケートからそれぞれの参加者の食事性炎症指数を算出、食事性炎症指数のスコアによって3グループにわけて子宮内膜症との関連を分析しました。

対象者3,410人のうち子宮内膜症と診断されたのは265人で、データ分析の結果、食事性炎症指数が低いグループに比べて中間のグループや高いグループは、子宮内膜症の発症している割合がそれぞれ1.18倍と1.57倍であることが分かりました。

また、さまざまな要因との関連についてさらなる調査を行ったところ、被験者のうち、肥満ではない女性、糖尿病ではない女性、高血圧の女性、経産婦、経口避妊薬を使用している女性については、食事性炎症指数と子宮内膜症リスクの関連がより強く現れたということです。

以上の結果により、食事性炎症指数と子宮内膜症のリスクは関連があることが確認され、炎症を起こしにくい食事が子宮内膜症の予防になる可能性が示されました。

*米国全国健康栄養調査(NHANES):アメリカの政府機関によって行われている調査。アメリカ国民の健康状態や栄養状態を定期的に調査し、その結果は、国民の健康増進や疾病予防に活用されている。

<コメント>
今回の研究では、炎症を促進する性質のある食品の量をコントロールすることで、不妊の原因となる子宮内膜症を予防することができるかもしれない、ということがわかりました。

この研究で使われた「食事性炎症指数(Dietary Inflammatory Index)」とは、約2000件の先行研究から開発されたもので、このスコアが低いほど炎症を抑える食事で、高いほど炎症を促進する食事と評価されます。

そもそも、炎症反応とは細菌等が体内に侵入しようとした時、体を守るために免疫機能が働くことで起きる防御反応であり、急性炎症と呼ばれている正常な反応です。

その一方、慢性炎症は軽度の炎症が体内で長期にわたって続く状態で、自覚症状はありません。必ずしも細菌やウイルスの感染によって生じるわけではなく、さまざまな病気と関連すると考えられています。

これまでの研究は主にハーバード大学によるもので、アメリカ人の食生活がベースになっていますが、そこで得られた知見をもとに日本人の食生活にあったDIIスコアの算出方法が開発されています。

食品の摂取頻度別加算スコアは以下の通りです。
各食品を一週間に摂取した頻度によって、炎症を促進する食品は1点または2点を加点、炎症を抑える食品では1点または2点を減点します。
ただし白米と、パンや小麦麺は、1点加算か0点のどちらかのみです。
同様にビールは1点減点か0点のどちらかのみです。

【炎症を促進する食品(週の摂取頻度)】
(食品名:+1点/+2点)
・肉:2〜6/7以上
・加工肉:2〜6/7以上
・臓物:2〜6/7以上
・青魚以外の魚:5〜6/7以上
・トマト:5〜6/7以上
・砂糖入り清涼飲料水:5〜6/7以上
・卵:5〜6/7以上
・白米(1日に):3杯以上
・パン、小麦麺:毎日

【炎症を抑える食品(週の摂取頻度)】
(食品名:+1点/+2点)
・緑色野菜:7〜13/14以上
・黄色野菜:5〜6/7以上
・緑茶:7〜13/14以上
・コーヒー:7〜13/14以上
・生ジュース:5〜6/7以上
・ワイン:2〜4/5以上
・ビール:5以上
・青魚:2〜4/5以上

これらの合計スコアが低いほど炎症を起こしにくい食べ方、高いほど起こしやすい食べ方になります。

ただし、炎症を促進する食品は避けるべきというわけではなく、全体の食べ方が重要です。