食生活 (栄養)

大豆食品はBPAの治療成績へのマイナスの影響を緩和する

細川忠宏

160203
大豆食品を食べることによって、環境ホルモンとして知られている、ビスフェノールA(BPA)の不妊治療成績へのマイナスの影響が緩和されることがアメリカで実施された研究で明らかになりました。

ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、体外受精に臨む239名の女性に、最初に質問票で過去3ヶ月間の大豆食品の摂取量を調べました。治療周期がはじまると採卵前に尿サンプルを採取し(治療継続時は2回まで)、尿中のBPA濃度を測定し、大豆食品の摂取が尿中BPA濃度と体外受精の治療成績(347周期)との関係にどのように影響を及ぼすのかを解析しました。

その結果、大豆食品はBPAの体外受精の治療成績へのマイナスの影響を緩和するように働くことがわかりました。


大豆食品を摂取しない女性では、尿中のBPA濃度が高くなるほど治療成績(出産率)が低くなり、反対に、大豆食品を食べる女性では、尿中のBPA濃度が高くなっても治療成績が低下しなかったからです。

尿中のBPA濃度で4つのグループにわけたところ、大豆食品を食べない女性では、BPA濃度が最も低かったグループの出産率は54%でしたが、摂取量が増えていくに従って、35%、31%、そして、最もBPA濃度が高かったグループでは17%まで低下しました。

一方、大豆食品を食べていた女性では、順に38%、42%、47%、そして、49%と、尿中のBPA濃度に関係なく、出産率は変わりませんでした。

このことから、大豆食品はBPAの不妊治療の治療成績へのマイナスの影響を緩和させる可能性があることがわかりました。  

ビスフェノールA(BPA)は、主に、ポリカーボネートと呼ばれるプラスティックの原料として使用される化学物質で、電気機器、OA機器、自動車・機械部品、食器、容器などに、使用されています。体内に取り込まれるのは、主に、食事を通してで、ポリカーボネート製の食器や容器などから、また、食品の缶詰や飲料缶から飲食物に溶けだし、それを飲食することによるものです。

このBPAは環境ホルモンとして、健康へのマイナスの影響が懸念されており、尿中のBPA濃度が高い女性ほど不妊治療の治療成績が低くなるという臨床試験結果がいくつか報告されており、BPAが生殖機能にマイナスの影響を及ぼすのではと考えられていました。

その一方で、動物(ネズミ)実験で、大豆食品を与えると、BPAの生殖機能へのマイナスの作用が緩和されたことから、ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、人間にもあてはまるのではないかとの仮説を立て、今回の試験が実施されました。

 結果は仮説を裏付けるもので、大豆を食べない女性ではBPA濃度は高くなるほど治療成績が悪くなるのに対して、大豆を食べている女性では治療成績は尿中BPA濃度に関係なく一定でした。

大変興味深い結果でした。大豆には環境ホルモンのマイナスの影響を防ぐ働きがあるのかもしれません。これまでも、ビタミンB群が環境ホルモンによる生殖機能の低下を緩和させたとの研究報告がなわれています。このように、食品中の成分は人工の化学物質の害から私たちの身体の働きを守ってくれるように働くのかもしれません。ただし、だからと言って、大豆に含まれるイソフラボンをサプリメントで摂ればいいという話しにはならないと思います。

なぜなら、ホルモン(エストロゲン)様物質の作用は、最適な量を摂取しなければ、必ずしも期待通りに作用しないからです。反対に、少しでも最適な量からはずれると、マイナスの作用を及ぼしていまいません。

 大切なことは、食事で摂ることです。このことからも、「なんでも偏りなく食べること」が基本であり、最も大切であるということを、改めて、教えられたように思います。