母児の健康 食生活 (栄養)

妊娠前後の食事パターンと妊娠初期の胎児の成長

細川忠宏

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妊娠前後に母親になる女性の「魚やオリーブオイルを多く、肉を少なく食べる食事パターン」は、自然妊娠による妊娠初期の胎児の成長に関連することがオランダの研究で明らかになりました。

エラスムス大学の研究グループは、妊娠前後の女性の食事パターンと妊娠初期の胎児の成長との関連を調べることを目的に、The Rotterdam Periconceptional Cohortに参加している妊婦を対象に研究を行いました。

単胎妊娠中の女性228名に妊娠6週から13週まで、3D経腟超音波法で胎児の頭殿長(胎児の頭の先からお尻までの長さ)と容積を継続して(中央値5回)測定し、胎児の成長と妊娠前後の食事パターンとの関係を解析しました。

対象者の妊婦は、自然妊娠が135名、体外受精や顕微授精による妊娠が93名でした。食事パターンは食物摂取頻度調査票で得た食事記録のデータを用いて主成分分析という方法で3つの食事パターン(野菜や果物、穀物をよく食べるパターン、固形脂肪やスナック菓子、砂糖をよく食べるパターン、魚やオリーブオイルをよく食べ、肉が少ないパターン)を抽出しました。

その結果、自然妊娠で妊娠した女性の魚やオリーブオイルをよく食べ、肉が少ない食事パターンは頭殿長が妊娠7週で1.9mm(+14.6%)、11週で3.4mm(+6.9%)の増加、胎児容積は7週で0.06cm³(+20.4%)、11週で1.43cm³(+14.4%)の増加と有意に関連することがわかりました。

一方、全体、及び、体外受精や顕微授精で妊娠した女性では食事パターンと妊娠初期の胎児の成長との関連はみられませんでした。

このことから、自然妊娠による妊婦の妊娠前後の、魚やオリーブオイルをよく食べ、肉を少なく食べる食事パターンは妊娠初期の胎児の成長に関連することがわかりました。

新しい命が成育するための栄養は、100%、母親になる女性から供給されます。つまり、胚や胎児の栄養状態は母親になる女性がなにをどれくらい食べたか、すなわち、食事パターンで決まるということになります。

そのことを調べるためにオランダのエラスムス大学の研究グループが妊婦の妊娠前後の食事パターンと妊娠初期の胎児の成長の関係を調べたところ、魚やオリーブオイルを多く、肉は少し食べるような食事の傾向と胎児の成長が関連したというものでした。

興味深いのは、体外受精による妊娠ではそのような関連がなかったということ。つまり、母親の食事傾向が妊娠初期の胎児の成長に関連したのは自然妊娠だけだったということです。

論文の著者は、その原因として、体外受精では受精時やその後の培養液中という成育環境が安定しているとことがあるのかもしれないとしています。

実際に体外受精や顕微授精で生まれた子ども出生時体重が培養液の種類によって異なることがわかっており、受精直後の栄養環境はその後の成長に影響を及ぼすのかもしれません。

いずれにしてにも、胎児や出生児の健康のために、妊娠前から魚と肉を偏りなく、バランスのよい食事を心がけることが大切なようです。

出典:Ultrasound Obstet Gynecol