食生活 (栄養)

食習慣と膣内環境の関係

細川忠宏

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食習慣と膣内環境は関連しており、特定の食習慣は膣内環境に有益な影響を与えることが示されました。

妊娠を望む女性にとって、複数のラクトバチルス属菌が優勢な膣内微生物叢は、膣の健康維持に極めて重要です。
膣内細菌叢のバランスが乱れた状態では、細菌性膣症のリスクや妊孕能の低下、さらには早産や流産リスクに関連することが知られています。 

これまでの研究でホルモンレベルや心理社会的ストレス、喫煙、性行為の習慣、外用製品や抗生物質の使用、尿路及び性感染症が、膣内細菌叢に影響を及ぼすことが明らかになっています。 

その一方、個別の栄養素が膣内の細菌叢に影響を及ぼすという報告はなされているものの、膣内環境への食習慣の影響については不明なところも多くありました。 

そこで、イタリアのボローニャ大学のDjusseらは、113名の生殖年齢にある健常女性を対象に、食習慣が膣内細菌叢に及ぼす影響を調査しました。 

膣内細菌叢を解析し、食習慣については、食物摂取頻度調査票を用いて食事調査を実施して、摂取エネルギーや栄養素、アルコール摂取量を評価し、食習慣と膣内細菌叢の関連について分析しました。

その結果、アルコールと動物性タンパク質(主に赤身肉と加工肉由来)の摂取量の増加は、主に膣内細菌叢保護的なラクトバチルス属の優勢を通じて、膣内環境に有益な影響を与えることがわかりました。 

特定の食習慣 (アルコールや動物性タンパク質の摂取を減らし、リノレン酸を多く摂取するなど) は、主にラクトバチルス属菌が優勢な微生物叢を維持することで、膣環境に良い影響を与える可能性があることを示されました。

〈コメント〉
今回の研究結果は、膣内細菌叢を良好に保つ上で食習慣も重要な因子であることが示されました。これまで提唱されていた、消化管と膣の相互作用、いわゆる「膣-腸相関」という概念を証明するものです。

「膣-腸相関」とは、健康的な食事が腸内と膣内の細菌のバランスに影響を与えることで、両者の間に関係があるとされる考え方です。

食事によって細菌の移動や種類が調整され、その結果、腸や膣内の細菌がつくり出す代謝物の量や種類も変わります。これにより、腸と膣の間接的なつながり(膣-腸軸)が働く可能性があるとされています。