ビタミン 母児の健康 食生活 (栄養)

妊娠中の母親の食事の質およびマルチビタミン摂取と2歳児の神経発達との関連

細川忠宏

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妊娠前からの食事の質は、出生児の2歳時点での認知機能や言語発達に良好な影響を及ぼし、食事の質が低い場合にはマルチビタミンミネラルのサプリメントが有効に働くことがカナダで実施された出生コホート研究で明らかになりました。

妊娠前からのマルチビタミンミネラルのサプリメント摂取が推奨されていますが、本研究においては、産まれた子供の2歳時点の神経発達まで良好な影響を及ぼすということが初めて報告されました。 

この研究は、カナダ・ケベック州で実施されている3D Cohort Studyという、妊娠期から出生後までを追跡する大規模出生コホートのデータを用いて行われました。

1500名以上の妊婦を対象に妊娠20〜24週に3日間の詳細な食事記録をつけてもらい、食事の質を定量化するためにカナダの食事ガイドラインを使ってスコア化し、その結果から食事の質が高いグループと食事の質が低いグループに分けました。また、マルチビタミンミネラル摂取の有無を記録しました。 

また、産まれた子供については2歳時点での認知発達、言語発達、運動発達を標準化検査で評価し、スコアが算出されました。

 ◎研究で何がわかったのか? 
1)食事の質が低く、かつ、マルチビタミンも摂取していないグループの母親から産まれた子供の認知や言語発達のスコアが最も低いことがわかりました。 

2)食事の質が高いグループは、マルチビタミンを摂取してもいなくても認知・言語発達スコアは良好で、マルチビタミンを使用しても明確な違いはみられませんでした。食事から十分な栄養がとれている場合、マルチビタミンは必須ではないことが示唆されました。

3)食事の質が低いグループでは、マルチビタミンを摂取していないと発達スコアは低いものの、マルチビタミンを摂取していると認知発達スコアが有意に高いことがわかりました。つまり、食事の質が十分でない場合には、マルチビタミンが補完的に働く可能性が示されました。

4)運動発達の結果に関しては、母親の食事の質とマルチビタミン剤の摂取の間に統計的に有意な相互作用は認められませんでした。

<コメント>
この研究の最大の特徴は、「食事の質」と「マルチビタミン摂取」を同時に評価し、両者の相互作用を調査した点にあります。

この研究の結論は、とてもシンプルで、妊娠中の十分な栄養は、「質の高い食事」または「マルチビタミン」によって確保され得るということです。ただし、その必要性は食事の質によって異なります。

つまり、食事の質が高い人にとってマルチビタミンは「必須」ではありませんが、食事の質が低い人にとってマルチビタミンは重要なセーフティネットになり得るということです。


この研究は、「マルチビタミンは飲むべきか・飲まないべきか」ということではなく、次の順番で考えることの大切さを示しています。

1)まず、自分の食事の質を振り返る 
2)食事で十分に整えられるなら、それを最優先に 
3)食事改善が難しい場合に、マルチビタミンで"底上げ"する 

マルチビタミンは万能ではありませんが、適切に使用すれば、意味のある補充になります。
妊活前妊娠中の栄養は、「何かを足す」前に全体を整える視点が重要です。