母児の健康 食生活 (栄養)

妊娠中の食事と炎症の関係

細川忠宏

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妊娠中の食事内容が体内の炎症状態に影響を与える可能性があることが、アイルランドで行われた研究の二次解析から報告されています。食事性炎症指数(DII)が高い、つまり炎症を引き起こしやすい食事ほど、体内が炎症状態になりやすくなる傾向が示されています。

妊娠中の女性の体の中では、胎児を守りながら合併症を防ぐために、免疫機能が精密にコントロールされています。そのためこうした免疫のバランスが崩れると、妊娠高血圧腎症といった妊娠中の合併症や早産などのリスクが高まることが知られています。

近年、食事内容が体内の炎症状態に関係することが注目されていますが、妊娠中の免疫応答との関連については、まだ明らかになっていない部分が多くあります。

今回紹介する研究は、アイルランド国立産科病院で妊娠中の母体と腸内環境や免疫との関係を調べるために行われた研究の二次解析です。この研究では、妊娠後期(28〜32週)の妊婦68名を対象に、過去6か月間の食事内容をもとに「食事性炎症指数(E-DII)」を算出しました。この指数は、数値が高いほど炎症を引き起こしやすい食事であることを示します。

あわせて、血液中の炎症関連物質や免疫細胞の反応を測定し、食事との関連が調べられました。

その結果、いくつかの興味深い関連が明らかになりました。まず、炎症を起こしやすい食事(E-DIIが高い食事)をしているほど、体の中で炎症に関わる物質の一つである「C3」が増えていることが確認されました。C3は免疫の働きに関係するタンパク質で、値が高い状態は、妊娠糖尿病や早産のリスクと関連する可能性があると考えられています。さらに、炎症を引き起こす物質であるIL-17Aについても、同様に高くなる傾向が見られました。

一方で、炎症を抑える働きを持つIL-10は、炎症を起こしやすい食事ほど少なくなる傾向が示されました。ただし、すべての炎症関連の指標が変化したわけではなく、一部の物質では明確な関連は認められませんでした。

これらの結果から、妊娠中の食事が母体の炎症状態や免疫に影響を与える可能性が示されました。特に、果物や野菜、全粒穀物を中心とした「炎症を起こしにくい食事」は、一部の炎症マーカーを抑える方向に働く可能性があると論文では結論づけています。

<コメント>
妊娠中の食事は、単なる栄養補給にとどまらず、体内環境のバランスを整える重要な要素です。妊娠前から抗炎症性を意識した食生活を心がけることが、将来的な妊娠合併症のリスク低減につながる可能性があります。

この研究で使われた「食事性炎症指数(Dietary Inflammatory Index)」とは、約2000件の先行研究から開発されたもので、このスコアが低いほど炎症を抑える食事で、高いほど炎症を促進する食事と評価されます。

そもそも、炎症反応とは細菌等が体内に侵入しようとした時、体を守るために免疫機能が働くことで起きる防御反応であり、急性炎症と呼ばれる一時的な炎症は正常な反応と言えます。

その一方、慢性炎症は軽度の炎症が体内で長期にわたって続く状態で、自覚症状はありません。必ずしも細菌やウイルスの感染によって生じるわけではなく、さまざまな病気と関連すると考えられています。

これまでの研究は主にハーバード大学によるもので、アメリカ人の食生活がベースになっていますが、そこで得られた知見をもとに日本人の食生活にあったDIIスコアの算出方法が開発されています。

食品の摂取頻度別加算スコアは以下の通りです。
各食品を一週間に摂取した頻度によって、炎症を促進する食品は1点または2点を加点、炎症を抑える食品では1点または2点を減点します。

ただし白米と、パンや小麦麺は、1点加算か0点のどちらかのみです。



同様にビールは1点減点か0点のどちらかのみです。

【炎症を促進する食品(週の摂取頻度)】
(食品名:+1点/+2点)
・肉:2〜6/7以上
・加工肉:2〜6/7以上
・臓物:2〜6/7以上
・青魚以外の魚:5〜6/7以上
・トマト:5〜6/7以上
・砂糖入り清涼飲料水:5〜6/7以上
・卵:5〜6/7以上
・白米(1日に):3杯以上
・パン、小麦麺:毎日

【炎症を抑える食品(週の摂取頻度)】
(食品名:+1点/+2点)
・緑色野菜:7〜13/14以上
・黄色野菜:5〜6/7以上
・緑茶:7〜13/14以上
・コーヒー:7〜13/14以上
・生ジュース:5〜6/7以上
・ワイン:2〜4/5以上
・ビール:5以上
・青魚:2〜4/5以上

これらの合計スコアが低いほど炎症を起こしにくい食べ方、高いほど起こしやすい食べ方になります。
ただし、炎症を促進する食品は絶対に避けるべきというわけではなく、全体のバランスが重要です。