子宮内膜症の痛みとQOLに対するオメガ3脂肪酸の補助的な可能性
子宮内膜症の女性において、従来の治療にオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)のサプリメントを補助的に追加した女性では、従来治療のみの女性と比べて、骨盤の痛みや月経痛などの痛み、炎症に関わる値、生活の質の改善幅が大きかったことが報告されています。
子宮内膜症は、月経痛や慢性的な骨盤痛、性交痛などを引き起こすことで、日常生活や仕事、睡眠、気分にも影響しやすく、生活の質を大きく下げることがあります。
今回の研究では、子宮内膜症と診断された女性を対象に、従来の治療のみを受けたグループと、従来治療に加えてオメガ3脂肪酸を摂取したグループを比較しています。オメガ3脂肪酸は、魚油に多く含まれるEPAやDHAなどの脂肪酸で、体内の炎症反応を調整する働きがあると考えられています。研究では、EPAとDHAを含むサプリメントが使用され、摂取量の中央値はEPA+DHAの合計が1日900mg、摂取期間の中央値は12週間でした。
対象となったのは2021年から2024年までに中国・北京の医療機関で治療を受けた子宮内膜症患者でした。2021〜2022年に従来治療のみを受けた女性を対照群、2023〜2024年に従来治療にオメガ3脂肪酸を追加した女性をオメガ3群として解析しています。痛みは、0〜10点で痛みの強さを評価するVASという方法を使って、全体的な痛み、月経困難症、慢性骨盤痛、性交痛が評価されました。また、血液中のIL-6、TNF-α、CRPといった炎症に関わる値、さらに質問票を使って身体的・精神的な生活の質も調べられました。
結果として、オメガ3脂肪酸を追加した群では、従来治療のみの群と比べて痛みの改善幅が大きいことが示されました。全体的な痛みのスコアは、オメガ3群で平均3.0点低下したのに対し、対照群では平均1.5点の低下でした。つまり、この研究では、痛みの改善幅がおよそ2倍大きかったと報告されています。
炎症に関わる値についても、オメガ3群ではIL-6、TNF-α、CRPの低下幅がより大きいことが示されました。これらはいずれも炎症の状態を反映する指標として使われることがあり、痛みの改善と並行して低下していた点は、オメガ3脂肪酸が子宮内膜症における炎症環境に関わる可能性を示す結果といえます。
生活の質についても、オメガ3群でより大きな改善が認められました。身体的な健康度を示す値(PCS)、精神的な健康度を示す値(MCS)のいずれも、従来治療のみの群より改善幅が大きい結果でした。
さらに、年齢や病状などの影響を考慮した解析でも、オメガ3脂肪酸の摂取は、痛みが2点以上改善することや、身体的・精神的QOLが一定以上改善することと関連していました。解析方法を変えても結果はおおむね一貫していたと報告されています。
<コメント>
子宮内膜症は慢性的な痛みにより日常生活や仕事、睡眠、気分にも影響しやすく、生活の質を大きく下げることがあります。
この研究においても、痛みそのものだけでなく、身体面と精神面の両方で検討が行われ、改善が示された点は注目されます。
ただしこの研究は、患者さんをあらかじめ無作為に分けて比較した試験ではなく、過去の診療データをあとから解析した後ろ向き研究と呼ばれる方法で行われたものです。そのため、オメガ3脂肪酸を追加した群で痛みや炎症の改善が大きかったとしても、その効果がオメガ3脂肪酸だけによるものかどうかは断定できません。今後は、より厳密な臨床試験での検証が期待されます。
オメガ3脂肪酸は、従来のホルモン療法や鎮痛薬に置き換わるものではありませんが、炎症を調整する可能性のある成分として、今後さらに検討される価値があります。
食事が体内の慢性炎症を「促進」するか「抑制」するかを数値化する指標の一つとして知られる食事性炎症指数(DII)でも、オメガ3脂肪酸を多く含む青魚は炎症を抑制しやすい食品に分類されます。また健康的な食事として広く知られる地中海食でも、魚を多く食べることが特徴のひとつとなっています。
魚を食べる頻度が低い女性は意識して魚を食べること、また必要に応じてサプリメントの利用を検討すると良いかもしれません。

