食生活 (栄養)

男性不妊とマグネシウムの関係―血中濃度と精液所見・AMHの関連

細川忠宏

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不妊症男性を対象とした研究で、血液中のマグネシウム濃度が高い男性ほど、精子濃度や運動精子数、AMHが高い傾向にあることが報告されました。

マグネシウムは、骨や筋肉、神経の働きだけでなく、細胞がエネルギーをつくる過程にも関わる重要なミネラルです。一方で精子がつくられ、動くためにもエネルギーが必要であり、マグネシウムは精子の運動や成熟に関係している可能性が考えられています。

今回の研究では不妊症の男性を対象に、血液中のマグネシウム濃度が精子の数や運動性、ホルモンとどのように関連しているかを調べました。

対象となったのは、デンマークのコペンハーゲン大学病院で行われた研究に参加した不妊症男性299名です。年齢の中央値は34.1歳、BMIの中央値は25.8(kg/m²)でした。対象者は血液中のマグネシウム濃度によって3つのグループに分けられ、精液検査の結果や、テストステロン、FSH、LH、インヒビンB、AMHといったホルモンとの関連が調べられました。

結果として、血液中のマグネシウム濃度が最も高いグループでは、最も低いグループと比べて、精子濃度と総精子数が有意に高いことが示されました。具体的には、精子濃度は最も高いグループで2,090万個/mL、最も低いグループで860万個/mL、総精子数はそれぞれ7,200万個と3,700万個でした。

また、総運動精子数(動いている精子の数)や、総前進運動精子数(前に進む力を持つ精子の数)についても、血液中のマグネシウム濃度が高い男性で高い傾向が認められました。総運動精子数は、マグネシウム濃度が最も高いグループで3,400万個、最も低いグループで2,300万個、総前進運動精子数はそれぞれ2,300万個と1,100万個でした。

さらに、AMHについても、マグネシウム濃度が高い男性で高い値が示されました。AMHというと、女性では卵巣予備能の指標として知られていますが、男性では精巣内で精子がつくられる環境を支える細胞から分泌されることから、男性では造精機能を支える精巣内環境と関係している可能性があります。

今回の研究では、血液中のマグネシウム濃度が最も高いグループのAMHは40pmol/L、最も低いグループでは28pmol/Lと報告されています。一方で、AMH以外のFSH、LH、インヒビンBといたたホルモンでは、マグネシウム濃度による明らかな差は認められませんでした。

結論として、不妊男性において血液中のマグネシウム濃度が正常範囲内であっても、濃度が高いグループでは低いグループと比べて精子濃度が約2.4倍、総運動精子数が約2.1倍高く、AMHも有意に高いことがわかりました。

<コメント>
今回の結果は、マグネシウムが男性の精液所見や精巣機能に関わっている可能性を示すものです。特に、精子濃度や運動精子数だけでなく、精子をつくる環境にかかわる細胞から分泌されるAMHとも関連が見られた点は、マグネシウムが精子をつくる環境に何らかの形で関与している可能性を考えるうえで興味深い結果です。

また男女共に日本人ではマグネシウムが平均として十分に摂取できていないことがわかっています。食事摂取基準では30-40代の男性は一日に380mg、女性では290mgのマグネシウムの摂取が推奨されていますが、実際には男性では平均241mg、女性では205.5mgしか摂れていません。

一方で、マグネシウムは不足しても過剰になっても体に影響を及ぼすことがあります。まずはバランスの良い食事から十分な量をとることを意識することが大切です。

マグネシウムは精製度の低い穀物や海藻類、ナッツ類、豆類などに多く含まれます。たとえば、毎日の白米を胚芽米にする、味噌汁にあおさを入れる、間食にアーモンドなどのナッツを摂る、納豆や豆腐といった大豆製品を積極的に摂るようにするなど、マグネシウムを多く含む食品を意識してとり入れるようにするとよいでしょう。