妊娠前後の超加工食品摂取と妊娠しやすさ・胚の発育の関係
超加工食品の摂取量が多い男性ほど妊娠させやすさの低下や不妊リスクの上昇と関連し、女性では超加工食品の摂取量が多いほど妊娠初期の胚の成長や卵黄嚢の大きさが小さいことと関連していることが報告されています。
近年、「超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)」と呼ばれる食品の摂取増加が世界的な課題となっています。UPFとは、スナック菓子や菓子パン、インスタント食品、加工肉、一部の清涼飲料水など、工業的な加工工程を多く経て作られた食品を指します。高所得国では、1日の摂取エネルギーの半分以上をUPFが占めることもあるとされており、UPFの摂取量が多い人では肥満や糖尿病、心血管疾患などとの関連がわかってきています。
今回の研究では、オランダの大規模出生コホート(妊娠を希望するカップルやその子どもを長期間追跡する研究)に参加した女性831名と男性パートナー651名を対象に、妊娠前後の食事内容と妊孕性(妊娠しやすさ・させやすさ)、さらに妊娠初期の胚発育との関連が調べられました。
参加者には食事に関する質問票への回答を依頼し、食品を「超加工食品」と「それ以外」に分類しました。また、妊娠までにかかった期間や不妊治療の有無から妊孕性を評価し、妊娠7週、9週、11週には経腟超音波検査で胚の大きさや卵黄嚢の体積を測定しました。
その結果、妊孕性においては女性では超加工食品の摂取量と妊娠しやすさや不妊リスクとの間に明確な関連は認められませんでした。一方で、男性では超加工食品の摂取量が多いほど妊娠に至る確率が低く、不妊症のリスクが高いことが示されました。
さらに、超加工食品の摂取量が多い男性では、少ない男性と比較して不妊リスクが約1.7倍高いことが報告されました。
一方、女性では妊孕性との関連は見られなかったものの、妊娠初期の胚発育との関連が観察されました。超加工食品の摂取量が多い女性ほど、妊娠7週時点の胚の大きさ(頭からお尻までの長さ)がやや小さく、卵黄嚢の体積も小さい傾向が認められました。
卵黄嚢は妊娠初期に胚へ栄養を供給するための重要な組織であり、胎盤がつくられるまでの発育を支える役割を担っています。そのため、研究者らは妊娠初期の発育環境に何らかの影響が生じている可能性を指摘しています。
以上のことから、妊娠前後の超加工食品の摂取が、妊孕性や胚の発育に対して男女で違った影響を及ぼすことが示されました。父親では受胎能の低下・不妊症リスクの上昇と関連し、母親では妊娠初期(特に7週時点)の胚の成長や卵黄嚢体積の小ささと関連していました。
妊娠前からの健康管理において、男性女性どちらにとっても食事の質を考慮することの重要性が示されました。研究者らは、超加工食品の摂取量が比較的低い参加者たちにおいても関連がみられたことから、わずかな食事改善でも生殖機能にはよい影響を及ぼすのではないかと述べています。
<コメント>
この研究から超加工食品そのものが妊孕性低下や胚発育不良の直接の原因であることが証明されたわけではありませんが、超加工食品の摂取量が比較的少ない集団であっても関連が認められたことから、妊娠を希望するカップルにとっては、男女ともに加工度の高い食品に偏りすぎず、野菜や果物、魚、豆類などを中心としたバランスのよい食事を心がけることが大切である可能性が示された研究といえそうです。
超加工食品とは、食品の加工度が非常に高い食品のことで、食品をその加工度によって分類する「NOVA分類」によって、一番加工度の高いグループに属しているものを指します。
NOVA分類は、栄養学や公衆衛生学の分野で広く利用されており、この分類法による食品の分類は、以下の4つです。
【グループ1:食品をまったくまたはほとんど加工していないもの】
・果物、野菜、穀物(新鮮なもの/絞ったもの/冷凍/乾燥させたもの)
・豆類
・いも類
・きのこ(生/乾燥させたもの)
・肉(かたまり/切り身)
・魚介類
・卵
・牛乳(新鮮なもの/低温殺菌/粉末)
・果物または野菜ジュース(新鮮なもの/砂糖や香料を添加していないもの)
・ナッツ類、種子(塩分や糖分を添加していないもの)
・ハーブやスパイス
・プレーンヨーグルト
・緑茶、紅茶、コーヒー、飲料水
【グループ2:加工食品の原料】
・植物油
・バター、ラード
・砂糖、糖蜜(サトウキビやビート由来)
・はちみつ、メープルシロップ
・塩
【グループ3:加工食品】
・塩漬けまたは瓶詰めの野菜や豆類
・塩漬けまたは砂糖漬けのナッツや種子
・乾燥・熟
・燻製の肉や魚
・燻製の肉や魚
・魚の缶詰め
・シロップ漬けの果物
・包装されていない作りたてのパンとチーズ
【グループ4:超加工食品】
・スナック菓子
・クッキー
・チョコレート
・ケーキ
・アイスクリーム
・大量生産されたパン
・マーガリン
・朝食用シリアル
・炭酸飲料
・エナジー飲料
・乳飲料
・フルーツヨーグルト
・パイ、パスタ、ピザ
・肉や魚のナゲット
・ソーセージ、ハム
・ハンバーガーやホットドッグ
・インスタント食品
※FAO(国連食糧農業機関)「Ultra-processed foods, diet quality, and health using the NOVA classification system」より引用・改変
超加工食品を多く摂ることで、脂質や塩分炭水化物の摂取が多くなり、加工度の低い食品に含まれるたんぱく質や食物繊維、ビタミン・ミネラル類の摂取が少なくなってしまいます。
超加工食品を食生活から完全に排除することは難しいかもしれませんが、この分類を念頭におき、なるべく摂取する機会を減らすことが大切と言えそうです。

