プロバイオティクス(乳酸菌)配合マルチサプリメントと卵胞発育・採卵成績
スペインの女性196名を対象とした研究で、プロバイオティクスや複数の栄養成分を含むサプリメントを卵巣刺激の30日以上前から摂取したグループでは、サプリメントを飲まなかったグループより卵胞数が多いことが示されました。
体外受精などの生殖補助医療では、採卵に向けた卵巣刺激を始める前から栄養状態を整えることで、卵胞の発育や卵子の状態を改善できないかという研究が行われています。これまでにも、コエンザイムQ10やメラトニン、イノシトール、ビタミン・ミネラルなど、さまざまな成分と生殖成績との関係が検討されてきました。また、膣や子宮内で乳酸菌の一種であるラクトバチルスが多い状態と、良好な生殖成績との関連を調べた研究もあります。
今回の研究では、こうした栄養成分とプロバイオティクスを組み合わせたサプリメントが、卵胞の発育や採卵成績に影響するかが検討されました。
研究はスペインの3つの生殖医療施設で行われ、18~34歳の女性196名が参加しました。いずれも、卵巣刺激に対して標準的な反応が見込まれる「ノーマルレスポンダー」と呼ばれる女性で、卵子提供を予定している女性でした。参加者は無作為に98名ずつ、サプリメント群とプラセボ群に分けられました。参加者だけでなく研究に関わる側にもどちらを摂取しているかわからない二重盲検と呼ばれるの方法が採用されています。
サプリメントには、ミオイノシトール、D-キロイノシトール、コエンザイムQ10、メラトニン、ビタミンD、葉酸、ビタミンB群、ビタミンE、鉄、ヨウ素、亜鉛などに加え、プロバイオティクスとして Lactobacillus gasseri と Lactobacillus crispatus が含まれていました。卵巣刺激を開始する30日以上前から、採卵前に卵子の最終成熟を促す「トリガー」を行う日まで摂取し、平均摂取期間は約44日でした。
まず、割り付けられた参加者をそのグループのまま評価する「ITT解析」では、卵巣刺激終了時の総卵胞数がサプリメント群で平均28.0個、プラセボ群で24.7個でした。また、採卵可能な大きさに近づいた16mm以上の卵胞も、サプリメント群の19.3個に対してプラセボ群では15.8個と、いずれもサプリメント群で有意に多い結果となりました。卵巣刺激を行った日数やFSH製剤の総投与量には、明確な差はみられていません。
実際の採卵成績についても、採卵された卵子数はサプリメント群24.8個、プラセボ群22.6個、成熟卵子(MⅡ卵子)は20.4個と18.9個で、いずれもサプリメント群の方がやや多い傾向があることがわかりました。
さらに研究では、決められた手順を守って研究を完了した79名だけを対象とする「PP(per-protocol)解析」も行われました※。この解析では、総採卵数がサプリメント群27.7個に対してプラセボ群21.2個、成熟卵子数は22.5個に対して17.3個、良好な成熟卵子数は19.0個に対して13.4個と、いずれもサプリメント群で有意に多い結果となりました。総採卵数だけをみると、サプリメント群ではプラセボ群より平均で約6.5個多い計算になります。
今回の研究からは、プロバイオティクスと複数の栄養成分を組み合わせたサプリメントを卵巣刺激前から摂取することで、卵胞の発育に良い影響を与える可能性が示されました。
※ITT解析は、途中で摂取状況に違いが生じた場合なども含め、最初の無作為なグループ分けをできるだけ保ったまま比較した解析です。これに対してPP解析では、研究を完了し、決められた方法を守った参加者だけが対象になります。
<コメント>
今回の研究で興味深いのは、もともと若く、卵巣刺激への反応も良好と考えられる卵子提供者を対象としているにもかかわらず、サプリメント群で卵胞発育に差がみられた点です。主要なITT解析でも、総卵胞数と16mm以上の卵胞数については有意差が確認されています。
一方で、「採卵数や卵子の質が改善した」という部分については慎重に捉える必要があります。研究参加者全体を比較したITT解析では、総採卵数、成熟卵子数、良好な成熟卵子数のいずれにも統計学的な有意差はありませんでした。有意差がみられたのは、規定どおり研究を完了した79名に限定したPP解析です。PP解析では採卵数が平均21.2個から27.7個へ増えていましたが、この結果だけから「服用を守れば約30%採卵数が増える」と考えることはできません。
また、本サプリメントにはコエンザイムQ10、メラトニン、イノシトール、ビタミン、ミネラル、さらに L. gasseri や L. crispatus が含まれています。そのため、今回の研究で得られた結果がどの成分によるものなのか、また複数の成分の相互作用によるものなのかはわかりません。今後、不妊症患者を対象としたより大規模な研究で、採卵数だけでなく、受精率、胚発育、妊娠率や生児出産率まで含めて検証されることが期待されます。

