妊娠前からの葉酸摂取と胚の発育との関連
自然妊娠993名を対象とした研究で、葉酸サプリを妊娠前から摂取していなかった女性や、血液中の葉酸濃度が低い女性では、妊娠初期の胚の発育の遅さや、成長の度合いが小さいこととの関連が示されました。
妊娠初期は、受精卵から胎児のさまざまな器官や体の形がつくられていく重要な時期です。オランダ・ロッテルダムで行われている研究では、妊娠前後の生活習慣が、この時期の胚の発育や成長とどのように関連するのかが調べられました。
今回解析されたのは、自然妊娠による単胎妊娠993名です。妊娠7週と9週ごろに経腟3D超音波検査を行い、撮影した画像をバーチャルリアリティ(VR)技術で立体的に観察しました。胚の大きさは、頭からお尻までの長さである「頭殿長」で評価しました。さらに、手足の発達や体の曲がり方、脳の形などから胚の発育段階を判定する「Carnegie(カーネギー)ステージ」を用い、大きさだけではわからない胚の形態的な発育も評価しました。
妊娠前後の生活習慣としては、喫煙、飲酒、カフェイン摂取、身体活動、葉酸サプリの使用状況を質問票から調査しました。葉酸サプリについては、妊娠前から摂取していたグループと、妊娠してから開始した、または摂取していなかったグループとを比較しています。また、妊娠初期に採血を行い、血液中の葉酸濃度についても調べました。
その結果、葉酸サプリを妊娠判明後から摂取または摂取していなかったグループでは、妊娠前から摂取していたグループと比べて、胚がCarnegieステージの最終段階に到達する時期が推定0.51日遅く、妊娠10週2日時点の頭殿長も0.72mm(1.6%)小さいこととの関連が認められました。
さらに、血中の葉酸濃度が低い(25.5nmol/L未満)女性では、高い(25.5nmol/L以上)女性と比べて、胚の形態発育が推定1.01日遅く、妊娠10週2日時点の頭殿長も1.24mm(3.7%)小さいこととの関連が示されました。被験者の年齢や出産経験、その他の生活習慣などを考慮した解析でも、こうした関連は認められました。
一方、この研究では、喫煙、飲酒、カフェイン摂取、身体活動と、胚の発育や頭殿長との間には明確な関連は認められませんでした。ただし、これは妊娠中の喫煙や飲酒などに問題がないことを意味するものではありません。生活習慣は自己申告で評価されていることや、比較的健康な女性が多い集団であることなども研究上の限界として挙げられています。
今回の結果から、妊娠してから葉酸を摂り始めるのではなく、妊娠前から葉酸を摂取し、妊娠初期に十分な血中濃度を確保しておくことが、胚の正常な発育を支えるうえで重要である可能性が示されました。
<コメント>
葉酸というと、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低減するために妊娠前から摂取する栄養素として知られています。今回の研究では、胚の「大きさ」だけでなく、手足や脳などの形態がどの程度発達しているかを3D超音波で評価し、妊娠前からの葉酸摂取や血清葉酸濃度との関連が示された点が特徴です。
葉酸はDNAの合成や細胞分裂などに関わるため、細胞が急速に増える妊娠初期には特に重要です。今回の結果は観察研究による「関連」であり、葉酸不足が直接発育の遅れを引き起こしたと証明したものではありませんが、妊娠がわかってからではなく、妊娠を考え始めた段階から葉酸を摂取しておくことの重要性を改めて示す結果と考えられます。
なお、葉酸はホウレンソウやブロッコリーといった緑色の野菜や大豆、いちごやオレンジなどの果物に含まれるビタミンで、胎児の先天異常の予防のために妊娠を計画してから妊娠初期まではサプリメント等から400μg/日の摂取が推奨されています。

