食生活 (栄養)

不妊治療を受けるカップルの妊娠前の食事と出産との関係

細川忠宏

AdobeStock_976493347
米国の不妊治療カップル2,370組を追跡した研究で、妊娠前の食事が地中海食や一般的な食事指針に近いほど、赤ちゃんの出産に至る可能性がわずかに高い傾向がみられました。一方、妊活向けに考案された食事に明確な優位性は示されませんでした。

アメリカ国内の4つの不妊治療施設を受診した2,370組のカップルを対象に、妊娠前の食事と、その後に赤ちゃんの出産に至ったかどうかとの関係が調べられました。これは、以前に行われた不妊治療カップルの研究で集められたデータを、食事という別の視点から詳しく分析したものです。

研究では研究開始時に、女性と男性のそれぞれにアンケートを行い、普段どのような食品をどの程度食べているかを答えてもらいました。その回答をもとに、以下4種類の食事パターンにどの程度近いかが点数化されました。

①米国の食事指針に沿った健康的な食事「HEI-2015」
②野菜や果物、全粒穀物、豆類、魚などを多く取り入れる「地中海食」
③排卵障害との関係をもとに考案された「Fertility Diet」
④不妊治療を受ける女性の研究をもとに考案された「Pro-fertility Diet」

4つの食事パターンにどれだけ近いかについて、女性と男性それぞれの点数に加え、2人の点数を合わせたカップル全体の食事も評価されました。

最長18か月間追跡した結果、2,370組のうち1,054組で妊娠が確認され、821組が赤ちゃんの出産に至りました。また、287組では妊娠20週未満の流産などが確認されました。

食事との関連については、米国の食事指針に沿った健康的な食事や地中海食に近いほど、赤ちゃんの出産に至る可能性がわずかに高い傾向が、女性、男性、カップルのいずれの評価でもみられました。

妊活向けに考案された「Pro-fertility Diet」については、明確な差は確認されませんでした。女性が「Fertility Diet」に近い食事をしている場合には、赤ちゃんの出産に至る可能性がやや高い傾向方向を示しました。男性やカップル全体のFertility Diet、男女それぞれのPro-fertility Dietには、出産との関連がみられませんでした。

詳しく分析すると、女性のFertility Dietと出産との関連は、女性側に不妊の原因がある場合、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や排卵障害がある女性で比較的強くみられました。Fertility Dietは、もともと排卵障害との関係をもとに考案された食事であるため、排卵機能と関係する一部の女性には利益がある可能性が考えられます。

また、男女共にBMIが30以上の肥満に該当するカップルでは、一般的な健康食と出産との関係が比較的強くみられました。

妊娠20週未満の流産などについては、4種類の食事パターンのいずれとも明確な関係はみられませんでした。今回の結果から、健康的な食事によって流産を防げるとはいえません。

今回の研究からは、妊娠を希望するカップルは、特定の食品だけを意識するのではなく、野菜、果物、全粒穀物、豆類、魚などを取り入れた、偏りの少ない食生活を男女ともに心がけることが大切だと考えられます。

<コメント>
これまで、妊娠前の食事と不妊治療の結果との関係を調べた研究の多くは、女性の食事だけを対象としていました。今回、女性だけでなく男性の食事、さらに男女の点数を合わせたカップル全体の食事を評価した点は、この研究の大きな特徴です。

一般的な健康食では、女性、男性、カップルのいずれでも、赤ちゃんの出産に至る可能性がわずかに高い方向を示しました。明確な因果関係を示す結果ではありませんが、妊娠前の食生活は女性だけが取り組むものではなく、男性も一緒に見直す意義があることを示唆しています。

一方、妊活向けの食事として考案されたFertility DietやPro-fertility Dietには、不妊治療カップル全体で明確な利益がみられませんでした。Fertility Dietは、もともと排卵障害による不妊と食生活との関係を調べた女性の研究をもとに考案されています。また、Pro-fertility Dietも、主に生殖補助医療を受けた女性の研究結果に基づくものです。そのため、さまざまな不妊原因を持つ男女を含む今回の対象者全体には、はっきりした関連が表れなかった可能性があります。

ただし、今回みられた健康食との関連は小さく、統計学的にも明確とはいえない結果が含まれています。特定の食事を実践すれば妊娠や出産の可能性が高まるのではなく、健康な妊娠出産をめざすのであれば、男女共に妊娠前からバランスのよい食生活を心がけることが大切と言えるでしょう。