男性の喫煙が体外受精の出産率に及ぼす影響
女性が非喫煙者である1,235組のカップルを対象とした研究で、男性が1日20本以上喫煙する場合、体外受精によって出産に至る可能性が19%低いことが報告されました。
喫煙が妊娠や出産に悪影響を及ぼすことは広く知られており、特に女性の喫煙は不妊治療の成績を低下させることが報告されています。一方、男性の喫煙についても、精子の数や運動率などに悪影響を及ぼすことが知られていますが、体外受精の治療成績にどの程度影響するのかについては、これまで研究結果が一致していませんでした。
そこで中国の研究グループは、男性パートナーの喫煙と、体外受精によって赤ちゃんの出産に至る可能性との関連を調べました。
研究は中国・昆明市の医療機関で2019年8月から2021年6月に体外受精を受けたカップルを対象に行われました。女性は21~45歳の非喫煙者に限定し、最終的に1,235組を解析対象として、2023年7月まで治療経過を追跡しました。
男性の喫煙状況については、治療開始前に喫煙の有無や1日あたりの本数を調査し、「非喫煙」「1日20本未満」「1日20本以上」の3群に分類しました。さらに、採卵日に男性の血液と女性の卵胞液に含まれるコチニンという物質を測定しました。コチニンはニコチンが体内で分解される際につくられる物質で、たばこの煙にさらされているかどうかを確認するための指標となります。これにより、男性の喫煙状況を客観的に確認するとともに、女性の受動喫煙についても調べました。
研究では、1回の採卵で得られた卵子から得られた胚を、新鮮胚移植や凍結胚移植によって移植し、最終的に赤ちゃんの出産に至った割合(累積生児獲得率)を比較しました。
その結果、累積生児獲得率は、非喫煙者のカップルでは59.3%、男性が喫煙者の場合、1日20本未満では54.1%、20本以上の喫煙者では42.0%と、喫煙本数が多いほど低くなっていました。
さらに、男女の年齢やBMI、不妊期間、不妊原因などの影響を統計的に調整したところ、非喫煙者と比較して、1日20本以上の喫煙者では出産に至る可能性が19%低いことが示されました。一方、20本未満の喫煙者では8%低いという結果でしたが、統計学的に明確な差は認められませんでした。
妊娠の経過を詳しく調べると、胎児の心拍が確認されるまでの段階では、20本未満、20本以上のいずれの喫煙群でも、非喫煙群と比較して心拍確認に至る可能性が有意に低くなっていました。一方、胎児の心拍が確認された後については、出産に至る可能性に明確な差は認められず、妊娠初期の流産率にも群間で有意な差はありませんでした。
これらの結果から、男性の喫煙は体外受精によって赤ちゃんを授かる可能性の低下と関連し、その影響は主に胎児の心拍が確認されるまでの段階で生じている可能性が示されました。
<コメント>
今回の研究は、女性を非喫煙者に限定し、男性の喫煙状況を血液検査でも確認している点が特徴です。また、妊娠率だけでなく、実際に赤ちゃんの出産に至った割合を評価しており、男性の喫煙と体外受精の治療成績との関連を考えるうえで重要な報告といえます。
特に顕著な差が認められたのは1日20本以上の喫煙者でしたが、20未満でも出産に至る可能性が低下する傾向がみられ、胎児の心拍が確認される割合は有意に低くなっていました。このことから、喫煙本数が少なければ影響がないとはいえません。
今回の研究は観察研究であり、喫煙していた男性が禁煙した場合に治療成績がどの程度改善するかを調べたものではありません。しかし、妊娠を目指すカップルにとって、喫煙本数を減らすだけでなく、禁煙に取り組むことの重要性を改めて示す結果といえるでしょう。

