精液所見が正常でも精子の機能に異常がみられる可能性
インドで行われた研究で、精液所見がWHO基準の正常範囲にあった不妊男性は、不妊ではない男性と比べて活性酸素や精子DNAの損傷が多く、精子の構造の一部やミトコンドリアの機能にも違いがみられました。
お子さんを望む男性に対して広く行われているのが、精液の量や精子の濃度、運動率、正常な形態の精子の割合などを測定する精液検査です。しかし、これらの数値が基準範囲内であっても、必ずしも精子が受精や胚発育に必要な機能を十分に備えているとは限りません。
今回の研究では、インドのバナラス・ヒンドゥー大学で臨床的に不妊症と診断された男性を調べたところ、23%はWHOが2010年に示した基準で精液所見が正常範囲にありました。そのうち45人と、1歳未満の子どもがいて妊孕性が確認されている男性17人を比較し、通常の精液検査では評価されない精子の機能を詳しく調べました。
評価したのは、活性酸素種(ROS)、精子DNAの損傷、精子の先体と呼ばれる組織の状態、ミトコンドリア膜電位(MMP)です。活性酸素種は体内でもつくられる物質ですが、過剰になると酸化ストレスを引き起こし、精子の細胞膜やDNAなどを傷つける可能性があります。
その結果、精液所見が正常範囲にあった不妊男性では、妊孕性が確認された男性と比べて、活性酸素種と精子DNAの損傷が多く、先体の完全性とミトコンドリア膜電位は低いことがわかりました。いずれの差も統計学的に有意でした。
さらに、活性酸素種が多いほど、精子DNAの損傷や、本来より早い段階ですでに先体反応※を起こした精子が多く、ミトコンドリア膜電位は低いという相関がみられました。活性酸素種と先体反応済み精子との相関は特に強く、精子にかかる酸化ストレスと複数の機能異常が関連している可能性が示されています。
今回の研究は、精液検査で異常がみつからない場合でも、精子DNAの状態や酸化ストレスなど、通常の検査では捉えられない機能に違いがある可能性を示しました。
※ 先体反応とは、精子が卵子に近づいたとき、精子の頭部にある先体の膜が変化し、中に含まれる酵素などを放出する反応です。この反応によって、精子は卵子を包む「透明帯」と呼ばれる層を通過しやすくなり、受精へ進むことができます。
<コメント>
精液所見が正常で、女性側にも明らかな原因が見つからない場合や、治療を続けても妊娠に至らない場合など、実は男性の精子の質が低下している場合があります。
精子の質を低下させる要因はさまざまありますが、年齢とともに老化している卵子と違い、精子は毎日つくられ続けるため、生活習慣や食習慣を見直すことで改善することが可能です。
精子の質の改善のために男性が取り組める方法を以下にご紹介します。
・バランスの良い食生活を心がける
肉食に偏りがちな方は、野菜や果物、魚も意識して摂るようにし、炭水化物は玄米ごやんやライ麦パンなどの、精製度の低いものに替えてみましょう。
・十分な睡眠と適度な運動を
適度な運動は体の抗酸化力を高め、ホルモンバランスにもよい影響を及ぼしますが、過度な運動はかえって精子の質の低下につながるので注意が必要です。
・適正体重を維持しましょう
やせすぎ、太りすぎ、どちらもパートナーの妊娠率の低下につながることがわかっています。
・タバコやアルコールはほどほどに
精子の質を下げる原因となる、酸化ストレスを増やしてしまうほか、アルコールは男性にとって大切なミネラルである亜鉛の吸収を妨げてしまいます。
・育毛剤はひかえましょう
フィナステリドを主成分とするAGA治療薬には、男性ホルモンの作用を抑えるはたらきがあるため、精子の質の低下につながります。
・高温に注意
精子をつくる精巣は熱に弱い性質があります。長時間のサウナや入浴、ぴっちりとした下着は避けるようにしましょう。
・禁欲期間を短くする
禁欲期間が長くなると、質の低下した精子が増えることがわかっています。

