男性の年齢によって異なる精子採取前の最適な禁欲期間
精子凍結保存を行った男性945名を対象とした解析で、禁欲期間と精子の質との関係は年齢によって異なる可能性が示されました。40歳未満では3~5日、40歳以上では0~2日の禁欲で良好な精子所見がみられることがわかりました。
精液検査では一般的に一定期間射精を控える「禁欲期間」が設けられます。しかし禁欲期間が長くなると精液量や精子濃度は増える一方、精子の運動性やDNAの状態にはマイナスに働く可能性があり、どのくらいの期間が適しているかについては明確な答えは出ていません。
今回の研究では、中国の広東省生殖病院で2023年1月から2024年12月までに精子凍結保存を行った男性945名の診療データを振り返って解析しました。禁欲期間を0~2日、3~5日、6~7日、7日超の4群に分け、さらに男性を40歳未満と40歳以上に分けて、精液量、精子濃度、前進運動率、正常な形態の精子の割合、精子DNA断片化指数(DFI)などを比較しました。DFIは、精子のDNAにどの程度損傷が生じているかを示す指標で、数値が高いほどDNAの損傷が多いことを意味します。
解析の結果、全体として禁欲期間が長くなるほど精液量や精子濃度は増加しましたが、前進運動率は低下する傾向がみられ、DFIは上昇(DNAの損傷した精子の割合が上昇)しました。特に7日を超える禁欲ではDFIの上昇が目立ちました。一方、正常形態率には、禁欲期間による明確な違いはみられませんでした。
年齢別にみると、40歳未満では禁欲期間3~5日で精子の状態が良好だったのに対し、40歳以上では、精液量や精子濃度は少なくなるものの、0~2日の短い禁欲期間で精子の状態が良好でした。また、0~2日の禁欲では40歳未満と40歳以上でDFIに明確な差はありませんでしたが、禁欲期間が長くなるにつれて、40歳以上ではDFIがより大きく上昇する傾向がみられました。
さらに、このうち凍結精子を用いて体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)を行った104名について不妊治療の治療成績を調べました。40歳未満の48名では、禁欲期間による治療成績の明確な違いはみられませんでした。一方、40歳以上の56名では短い禁欲期間ほど良好な結果がみられ、禁欲期間によって生児出産の結果にも統計学的な差が認められました。
今回の結果から、精子採取前の禁欲期間はすべての男性で一律に考えるのではなく、男性の年齢も考慮する必要がある可能性が示されました。特に40歳以上では、長期間の禁欲を避けることが、精子DNAの状態や運動性を保つうえで有利となる可能性があります。
<コメント>
短い禁欲期間が精子の運動性やDFIに良い影響を与える可能性はこれまでも報告されていましたが、今回の研究では、その影響が男性の年齢によって異なり、特に40歳以上で禁欲期間の影響が大きくなる可能性が示された点が特徴です。
精液検査や不妊治療では、検査・治療の目的によって適切な採取条件も異なります。特に40歳以上の男性で精子運動率の低下やDFI高値がみられる場合には、医師にも相談の上、禁欲期間について再度検討しても良いかもしれません。

