葉酸サプリメントと妊娠高血圧症候群の関係
日本の妊婦約9万人を対象とした研究で、妊娠初期から中期に葉酸サプリメントを高頻度で摂取していた女性は、妊娠高血圧症候群や産後の高血圧が少ないことが報告されました。
葉酸は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスク低減のために、妊娠前からの摂取が推奨されている栄養素ですが、近年では、妊娠中の母親の健康にも役立つ可能性が注目されています。
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧を発症する病気で、母親と胎児の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。また、発症した女性は、出産後も高血圧や心血管疾患などのリスクが高くなることが知られています。
葉酸には、血管の健康に悪影響を与える「ホモシステイン」という物質を減らす働きがあります。そのため、葉酸の摂取が妊娠高血圧症候群の予防につながる可能性が考えられていますが、これまでの研究では一貫した結果が得られていませんでした。
今回、日本の大規模調査「エコチル調査」のデータを用いて、妊娠中の葉酸サプリメントの摂取頻度と、妊娠高血圧症候群および産後の高血圧との関連が調べられました。
研究では、2011~2014年に登録された妊婦91,069人を対象に、葉酸サプリメントの摂取頻度を「摂取なし」「低頻度(週3回未満)」「高頻度(週4~6回以上)」の3群に分けて比較しました。
その結果、葉酸サプリメントを高頻度で摂取していた女性は、摂取していなかった女性と比べて、年齢や妊娠前のBMIなどの影響を考慮しても、妊娠高血圧症候群になる割合が低いことがわかりました。一方、低頻度の摂取では、統計的に明確な関連は認められませんでした。
さらに、妊娠高血圧症候群を発症時期によって分けると、妊娠34週以降に発症する「遅発型」では、高頻度摂取との間にリスク低下を示す関連が認められましたが、34週未満に発症する「早発型」では認められませんでした。
また、出産1か月後の高血圧についても、葉酸サプリメントを摂取していた女性は、摂取していなかった女性に比べて、そのオッズが低頻度群で12%、高頻度群で15%低いことが示されました。
研究者らは、葉酸が血管の内側を覆う細胞の働きを保護することで、妊娠中や産後の血圧管理に役立つ可能性があると考えています。ただし、今回の研究は摂取頻度と病気の発症との関連を調べたものであり、葉酸サプリメントによる予防効果が直接証明されたわけではありません。
<コメント>
葉酸は、妊娠初期の胎児の発育に欠かせない栄養素として知られていますが、今回の研究では、母親自身の健康を守るという新たな可能性が示されました。
特に、葉酸サプリメントを高頻度で摂取していた女性で妊娠高血圧症候群が少なかったことは、継続的な摂取の重要性を考えるうえで興味深い結果です。
ただし、この研究では葉酸の摂取量が把握されておらず、妊娠高血圧症候群を予防するための適切な摂取量や摂取期間が明らかになったわけではありません。
葉酸は妊娠がわかってからではなく、妊娠を計画している段階から意識したい栄養素です。今回の研究は、妊娠前から葉酸の摂取に取り組み、妊娠中も栄養管理を続けることの意義を考える、新たな材料となるでしょう。

