プロファティリティ食と栄養補充で受精率と胚の質が改善
体外受精を受ける女性を対象とした研究で、プロファティリティ食と呼ばれる食べ方とオメガ3脂肪酸などの栄養補充を60日間行ったところ、受精率や胚の形成、胚の質が改善しました。
食事は、不妊治療の成績に影響する可能性のある生活習慣のひとつです。なかでも「プロファティリティ食(Pro-Fertility Diet:PFD)」は、葉酸やビタミンB12、ビタミンD、全粒穀物、乳製品、大豆製品、残留農薬の少ない野菜や果物などを重視する食事パターンで、これまでの観察研究では体外受精(IVF)の治療成績との関連が報告されてきました。
今回、イランでIVFを受ける18~42歳の女性180名を対象に、PFDを取り入れた食事とサプリメントによる介入の効果を調べる研究が行われました。
介入群(PFDとサプリメントをとり入れたグループ)では、IVFの治療周期を開始する前の60日間、管理栄養士が作成した個別の献立に沿ってPFDを実践しました。具体的な食べ方は、残留農薬の少ない野菜や果物を1日4サービング以上摂る、精製穀物を全粒穀物に置き換える、乳製品を1日2.5サービング、大豆製品を1サービング摂ることなどが勧められました。「サービング」とは、食品をどのくらい食べるかを示す1回分の目安量のことです。また、使い捨てのプラスチック製食品容器の使用をできるだけ避けることも指導されました。
さらに、オメガ3脂肪酸1,000mg、ビタミンD 1,000 IU、葉酸1,000µg、ビタミンB12 500µgを毎日摂取しました。一方、対照群には一般的な健康的な食事についての指導と、葉酸500µg/日の摂取が行われました。最終的に167名の治療成績が解析されました。
その結果、受精率は介入群で平均81%、対照群で66%、胚形成率は79%と62%で、いずれも介入群で高くなりました。また、形成された胚の数も平均3.78個に対して2.22個と、介入群で多い結果となりました。
胚の質にも違いがみられ、最も良好と評価されたグレードA胚の割合は、介入群では45.2%だったのに対し、対照群では21.7%でした。これらの差は、女性の年齢やBMI、男性の精子濃度や正常形態率などを考慮した解析でも認められました。
今回の研究から、IVF前の約2か月間に食生活を整え、オメガ3脂肪酸や複数のビタミンを補充することが、受精や胚発育に良い影響を与える可能性が示されました。
<コメント>
これまで、プロファティリティ食と不妊治療成績との関係を調べた研究の多くは、普段の食事内容と治療結果を比較する「観察研究」でした。今回の研究では、実際に食事内容を指定して2つのグルプを比較する「ランダム化比較試験」という方法で試験が行われた点に大きな特徴があります。食生活を約2か月にわたり管理する試験は参加者の負担も大きく、栄養研究として貴重な報告といえます。
一方、結果の受け止めには注意も必要です。今回の介入はプロファティリティ食だけではなく、オメガ3脂肪酸、ビタミンD、葉酸、ビタミンB12を同時に摂取するものでした。そのため、「オメガ3脂肪酸を摂れば胚の質がよくなる」「この食事だけで受精率が上がる」と個々の要素の効果を判断することはできません。
プロファティリティ食はもともとアメリカで不妊治療患者を対象とした研究から考案された食事パターンです。日本人の食生活にそのままあてはめられるかについては慎重に考える必要がありますが、お子さんを望む女性にとって、治療前から食事全体や栄養状態を整えることは、受精や胚発育にプラスにはたらく可能性があると考えられます。

